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匿名性をもつクロスチェーン取引を実現するWanchain

投稿日:2018年9月8日 更新日:

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Wanchainは、シンガポールに登記されたWanchain財団(万维链基金会)が中心となって展開している、仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトです。

Wanchainは中国語で”万维链”と呼ばれており、彼らは、Wanchainブロックチェーンとは、異なる資産を繋ぐインフラストラクチャーであると定義しています。

彼らのブロックチェーンプロジェクトは、現在までにイーサリアムとのクロスチェーン技術開発に成功しており、今後はさらなる仮想通貨とのクロスチェーン実現が期待されています。

目次
■プロジェクトの背景
■アルゴリズム、時価総額等
■創業者やプロジェクトチームについて
■今後の展開

プロジェクトの背景

ブロックチェーン界隈では、以前より、非中央集権化されたクロスチェーン技術を開発することは、ブロックチェーン全体の発展にとって欠かすことのできないものであるとされていました。

Wanchainの創業者である吕旭军は、クロスチェーン技術について以下のように語っています。

まず、彼は、二つの台帳の間で発生する価値の転移を、広義のクロスチェーンだと定義しており、人々の生活に貨幣が誕生した当時からあるとされる両替商や銀行も、広義のクロスチェーンを行っていた人たちだとしています。

両替商や銀行は、独立した一つの台帳を持っており、顧客との間で資産(価値)の転移が発生すれば、それらの台帳は必ずその価値の転移を記帳しなければなりません。

彼は、本質的に見れば、現代の中央銀行の精算システムや、クレジットカードやペイパル等のサードパーティによる支払いシステム等も、広義のクロスチェーンであると語っており、それらは今まで中央集権化されたシステムによって二つの台帳の間で発生する価値の転移を記帳してきたとしています。

ブロックチェーン界隈を見渡せば、非中央集権化されたクロスチェーン技術を実現させようとしているプロジェクトは数多く存在しており、Wanchainもまた、その実現に挑戦する一つのプロジェクトであることがわかります。

また、吕旭军は、クロスチェーンの実現は、ブロックチェーンの発展のみならず、金融業界、デジタル世界の発展にとっても欠かすことの出来ないものであると語っています。

彼は、イーサリアムの創始者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)の言葉を引用し、ブロックチェーンの応用シーンの中で金融業界は最も重要な領域であると定義しています。

現在のイーサリアム等のブロックチェーンが備えるスマートコントラクトという能力は、クロスチェーン技術による異なるブロックチェーンでの価値の精算が実現すれば、さらなるイノベーションを我々の生活に齎すのではないでしょうか。

アルゴリズム、時価総額等

Wanchain (WAN)トークンの時価総額は、2018年8月現在98億円ほどとされています。

また、彼らのブロックチェーンでは、既存のPoSアルゴリズムを基に、独自の奨励メカニズムを加えた新しいPoSコンセンサスアルゴリズムが採用されています。

彼らの新しいPoSコンセンサスアルゴリズムでは、クロスチェーン証明ノード(Voucher)、検証ノード(Validator)、ロックアカウント管理ノード(Storeman)という3つのノードが存在しています。

ロックアカウント(Locked Account)とは、WanchainがSecure multi-party computationとThreshold Key Sharing Schemeという暗号理論に基づき生成するクロスチェーン取引専用のアカウントとなります。

クロスチェーン証明ノード(Voucher)は、名前の通り、クロスチェーン取引を証明するノードとなり、保証金を収めることによってクロスチェーン取引の証明を行うとともに、収める保証金が多ければノードの証明が採用される確率が高くなるといった特徴を持ったノードとなっています。

検証ノード(Validator)は、取引が証明されたあと、ロックアカウント管理ノード(Storeman)に対してWanchainブロックチェーンの記帳等を通知する役割を果たし、ロックアカウント管理ノード(Storeman)は、その通知を受け取った後、暗号理論に基づきロックアカウントを操作し、実際的なクロスチェーン取引を行います。

また、Wanchainは、リング署名やワンタイムアカウント等によってクロスチェーン取引の匿名性を高めていることもその特徴となっています。

創業者やプロジェクトチームについて

Wanchainの創始者は吕旭军という人物です。

吕旭军は、これまで、仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトであるFactomの共同創始者として活躍してきた人物として有名です。

1992年に北京大学を卒業し、1998年にはアメリカのオハイオ州立大学で経済学とコンピュータ科学の修士を獲得した彼は、2014年頃までヒューレット・パッカード等でエンジニアとして活躍していたとされています。

2014年、彼はDavid Johnston等と共同でFactomを立ち上げ、CTO兼中国マーケット責任者として活動していました。

Factomは、日本の取引所であるコインチェックが取り扱っていた仮想通貨でもあるため、日本の仮想通貨ユーザーのなかでも、知っている方は多いかもしれません。

2016年、彼は、北京招商局や中国国内の友人たちからのラブコールを受けて中国へ帰国し、WangluTech(网录科技)という企業向けブロックチェーンを開発する企業を立ち上げています。

WangluTechは、創業後すぐに、国際的な水準のコンソーシアム型ブロックチェーンを開発することを目標に掲げ、その後、Wanchainプロジェクトの原型となる研究を始めたとされています。

2017年にWanchainプロジェクトが発表された当初は、このプロジェクトがWangluTechが開発したブロックチェーンというメディアの発表も存在していますが、しかしながら、おそらく中国のICO規制等の影響により、現在のWanchainはシンガポールに登記されたWanchain財団(万维链基金会)がプロジェクトの自治を行っているとされています。

また、上記のような吕旭军の経歴は、中国の仮想通貨・ブロックチェーン界隈のなかで、アメリカのブロックチェーンを巡るテクノロジーの潮流を中国に伝えたと評価されています。

今後の展開

Wanchainは、現在までにイーサリアムとのクロスチェーン技術開発に成功しており、今後は、2018年末までにビットコインとのクロスチェーン技術開発を成功させるとしています。

彼らは、将来的に、Wanchainブロックチェーン上で既存の保険や債権等の金融商品を扱うこと目標として掲げており、今後の開発が注目されます。

Wanchainは、匿名性を高めたクロスチェーン取引が行えるブロックチェーンとして、独自のソリューションを構築することに成功しています。

しかしながら、彼らは同時に、税務当局等の国家機関等が、税務調査を行う際などでも、双方の同意があれば監督省庁等が取引を開示出来るシステムを装備しています。

また、たとえばステーブルコインや一部の金融取引のコンプライアンスに沿うよう、実名制を取り入れているなど、彼らの実際的な取り組みからは、その非中央集権性の志向が、国家から逸脱するものではないことも確かなことと見受けられます。

参照 
・https://coinmarketcap.com/ja/currencies/wanchain/
・https://wanchain.org/about
・https://wanchain.org/files/Wanchain-Whitepaper-EN-version.pdf
file:///C:/Users/nkmrt/Documents/WAN%20Chain%20Whitepaper%20v3.0.pdf
・https://github.com/wanchain/docs
・http://www.qukuaiwang.com.cn/news/11718.html
・https://res.tuoluocaijing.cn/20180628211457-t5dw.pdf
・https://www.wanchain.org/files/Wanchain-Commercial-Whitepaper-CH-version.pdf
・https://www.chainnews.com/articles/372661153023.htm
・http://www.ico1.com/a/yijieshu_Over_/151.html
・https://www.jinse.com/bitcoin/230333.html
・https://www.8btc.com/p/wanchain
・http://www.baike.com/wiki/%E5%90%95%E6%97%AD%E5%86%9B
・https://www.hibtc.org/13353.html
・https://www.chainhoo.com/blockchain/29680/
・http://8btc.com/thread-80860-1-1.html
・https://cj.sina.com.cn/article/detail/5703435004/381008?column=onlinebank&ch=9
・https://www.8btc.com/article/256986
・https://www.jutuilian.com/article-9167-1.html
・https://baijiahao.baidu.com/s?id=1595978593656217984&wfr=spider&for=pc
・https://www.jutuilian.com/article-8875-1.html

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