中国先端テクノロジー配信メディア

Blockchain

PoWの非中央集権を支える中国のマイニング動向

投稿日:2018年7月19日 更新日:

Pocket

PoW をコンセンサスアルゴリズムとしているビットコイン(BTC)等の仮想通貨では、マイニング(採掘)と呼ばれる、コンピューターの計算能力を使用したブロックチェーンの記帳とコインの獲得が行われています。

現在、ビットコインが非中央集権的なものであるという認識は広く共有されていますが、その構造の背後には、マイニングを行うマイナー(採掘者)の存在が欠かせないものとなっているのです。

また、現在のビットコインのマイニングには、マイニングに最適化されたASICが必要不可欠となっています。

現在では、マイニングを行うマイナーは、より高性能なASICをより大量に使用することによって、ブロックチェーンを記帳し、コインを獲得しようとしています。

この記事では、ビットコイン最大のマイナーであり、同時に、マイニングに欠かせないASICを販売する世界最大企業の創業者である、ジハン・ウーについて、まずはご紹介したいと思います。

目次
■2017年までの動向
■2018年上半期の動向
■中国以外の世界の動向と中国の比較
■今後の予想

2017年までの動向

おそらく、ビットコインキャッシュ(BCH)という仮想通貨誕生の経緯を知っている方であれば、ジハン・ウーについて、どのような人物かご存知の方も多いのではないかと思います。

中国で”吴忌寒”、日本や海外では”ジハン・ウー:Jihan Wu”と呼ばれる彼の名前は、2017年のビットコインキャッシュ誕生の際、日本の仮想通貨メディア等でも度々取り上げられていました。

この記事では、中国のマイニング動向を中心に記すため、仮想通貨ビットコインキャッシュ(BCH)への言及は避けますが、彼がどのようにビットコインキャッシュ(BCH)に関わっているのかを理解することは、もしかすれば、中国のマイニング事情について理解する一助となるかもしれません。

2017年の時点で、32歳と報道されているジハン・ウーは、現在、マイニング用ASIC販売の世界最大企業であるビットメイン(比特大陆)創業者であり、また、マイニングプールBTC.com、ConnectBTC、AntPoolを運営するビットコイン最大のマイナーであります。

彼は、2011年にビットコインの存在を知ったあと、知り合いに借りた10万元を全てビットコインに投資したとされています。

曰く、彼は、金儲けのためにビットコインに投資したというよりも、サイバーパンク的思想から、これからはビットコインの時代だと感じ取ったそうです。

2011年、彼は、仲間たちとともに巴比特(8btc.com)という、現在中国最大のビットコイン情報を扱うメディアとなったコミュニティサービスを立ち上げています。

2012年、彼は、仲間たちとともに、世界初となるマイニング用ASICの開発のためBitfountain(比特泉)を立ち上げ、その後、2013年には、現在のビットメイン(比特大陆)を立ち上げています。

上記のとおり、ビットコインのブロックチェーンを動かすマイナーと、マイニングに欠かせないASICを販売する企業、この2つの領域で、ジハン・ウーという人物は、現在、強大な影響力を持っています。

非中央集権的な存在として語られるビットコインではありますが、そのマイニングという行為には、誰がより多く計算を行えたかを競うといった競争原理が存在しています。

その競争の中で、ジハン・ウー率いるビットメインは、より高性能なASICを開発し、また、彼のマイニングプールは、中国の安い電気代を背景として確かな競争力を得ることに成功したのかもしれません。

当然、その他の中国のマイナーや、ASIC販売企業、そして中国以外のブロックチェーンプレーヤー達も、絶え間ないイノベーションによって、ビットコインを始めとする仮想通貨のマイニングに関わる競争に参加しています。

しかし、現在、ビットコインという特定の国や地域に属さないとされる資産の背後に、中国という国のマイナー、ASIC販売企業、そしてジハン・ウーという人物が存在したことは、2017年までの仮想通貨の発展という視点からも、重要な要素だと考えられます。

2018年上半期の動向

2018年になり、ジハン・ウー率いるビットメインは、AIチップ等の開発に着手しており、その業務をマイニング用ASIC開発のみならず、他分野のチップ開発にも広げています。

また、上記のマイニングプールでは、2018年になり、ビットコイン以外にも、ビットコインキャッシュ等、複数の仮想通貨のマイニングが行われており、彼らのマイニングプールの動向は、仮想通貨そのものの動向として語られることも多くなっています。

しかし、2018年上半期に起こった出来事の中で、中国マイニング動向を語る上では、ビットコインゴールド(BTG)の51%攻撃について振り返ることも重要な視点だと考えられます。

たとえば、ビットコインが採用するPoWというコンセンサスアルゴリズムでは、仮想通貨が非中央集権的であるために、マイニングを行う人物や組織が分散している必要があります。

また、たとえばPoSでは、ステークを行う人物や組織が分散している必要があります。つまり、ブロックチェーンという非中央集権的な技術を支えるためには、その裏で記帳を行う参加者(マイナー等)が分散化している必要があるのです。

誰か一人の人物や組織によって、ブロックチェーンのネットワークの過半数以上のマイニング(採掘)が執り行われてしまうことは、そのブロックチェーンのリスクと成りえます。

そういった可能性は、今までも51%攻撃(51% Attack)と称され、リスクの程度が議論されていました。

そして、2018年5月、ビットコインゴールド(BTG)で51%攻撃が行われ、約20億円の被害が発生しました。

この実際に起った出来事は、ビットコインゴールドだけの問題ではなく、今後、ビットコイン、そして仮想通貨全体の信頼性を語る上で、非常に重要な示唆が含まれているものと考えられます。

中国以外の世界の動向と中国の比較

中国と、それ以外の地域でのマイニング事情を語る上では、まず真っ先に、中国の電気代の安さが、大きな違いとして浮かび上がります。

ビットコインを得るためのマイニングという行為が競争であるとすれば、より高性能なASICを開発する以外にも、安い電気代の場所で大量にASICを動かす必要で出てくることは避けられないからです。

しかし、同時に、中国では2017年9月からICO禁止を始めとした仮想通貨への規制が続いているため、電気代の安さのみで中国一箇所をマイニングファームとすることにも、当然リスクが存在しています。

日本では、GMOやDMM等が、マイニング事業へ乗り出しています。 彼らは、マイニングで勝つために半導体チップを開発する必要性を説いており、今後は、ビットメイン一社によるASIC供給の独占状態が崩れる可能性もあるかもしれません。

今後の予想

上記51%攻撃の被害にあったビットコインゴールドは、ビットコインキャッシュのように、ビットコインからハードフォークによって生まれた仮想通貨です。

そしてまた、ビットコインキャッシュの背後にジハン・ウーが存在するように、ビットコインゴールドの背後にも、ジャック・リャオ(廖翔:Jack Liao)という人物が存在します。

ジャック・リャオは、ジハン・ウーが立ち上げたビットメインのように、自身もASIC開発会社のLightningAsic(闪电(深圳)智能有限公司)を2014年に立ち上げています。

このビットコインゴールド51%攻撃の犯人は未だ分かっていませんが、Twitter上でジハン・ウーは、自身を犯人だとする噂を否定し、同時に、ジャック・リャオ本人がビットコインゴールドを攻撃することも可能だと指摘していることが確認できます。

また、ジハン・ウー曰く、ジャック・リャオがメディアを買収し不当な主張を流していると指摘しており、様々な憶測を読んでいます。 誰がビットコインゴールド51%攻撃の犯人なのかを確かめることは、この記事では重要ではないと考えます。

この出来事には、実際に起った51%攻撃の危険性、そして、マイニングという行為で競争力を持つことの意味、ひいては仮想通貨全体への啓蒙が含まれているのではないでしょうか。

GMOやDMM等、日本の企業がマイニング事業に進出することは、非中央集権という仮想通貨の機能を語る上で非常にポジティブな出来事だと思います。

日本の企業のみならず、今後も、様々な国や地域の企業が、マイニングという競争を激化させなくてはいけません。

競争が激化し、マイナーが分散化することこそが、仮想通貨の非中央集権がより強固なものに変わる第一歩となると考えられます。

参照 
・https://awtmt.com/articles/3314658?from=wscn
・https://www.xuehua.us/2018/06/30/%E5%BB%96%E7%BF%94%E5%90%B4%E5%BF%8C%E5%AF%92%E5%85%AC%E5%BC%80%E4%BA%92%E6%92%95-%E4%B8%BA%E4%BB%80%E4%B9%88%E5%A4%A7%E5%AE%B6%E6%80%BB%E6%98%AF%E9%92%88%E5%AF%B9%E5%90%B4%E5%BF%8C%E5%AF%92%EF%BC%9F/
・http://wemedia.ifeng.com/62408518/wemedia.shtml
・https://www.hecaijing.com/article/show/15274802154780602.html
・http://baijiahao.baidu.com/s?id=1601593816821165302&wfr=spider&for=pc
・http://www.wanbizu.com/news/201610247707.html
・http://www.528btc.com/person/2781.html
・http://www.360doc.com/content/18/0125/17/39966384_725049941.shtml
・https://baike.baidu.com/item/%E5%8C%97%E4%BA%AC%E6%AF%94%E7%89%B9%E5%A4%A7%E9%99%86%E7%A7%91%E6%8A%80%E6%9C%89%E9%99%90%E5%85%AC%E5%8F%B8
・https://baijiahao.baidu.com/s?id=1590453662953471722&wfr=spider&for=pc
・http://baijiahao.baidu.com/s?id=1590541583326599658&wfr=spider&for=pc

■中国ユニコーン企業100社以上総まとめ一覧

■【Chaitech(チャイテック)編集長の想い】チャイナ(China)とテック(Tech)に愛(ai)を込めて

■今後のChaitechの方向性
Pocket

-Blockchain

執筆者:

関連記事

中国 AI 人工知能 ブロックチェーン

世界規模ヘッジファンドであるクォンタム・ファンドの首席研究員:姜罗罗博士『デジタルマネーは若者にとっての希望となる』

【要約】 ・クオンタムファンド研究員、温州大学副教授の姜罗罗がデジタルマネーについて書いた記事 ・デジタルマネーの出現もまた貧富の差を広げるだろうが、それはまた若者に経済的自由を手に入れるチャンスを与 …

仮想通貨・ブロックチェーンを巡る2018年上半期までの中国政府動向

中国政府は、現在、中国国内でのICOを禁止し、仮想通貨取引所の営業も取り締まっています。 しかし、実際的には、2018年になった現在でも、中国のプロジェクトチームによる多くのICOが中国国外で行われて …

ブロックチェーン技術によって保険業界に革命を起こすShinechain

目次 ■サービスの簡単な説明 ■定量説明 ■創業者の紹介 ■サービスの説明 ■今後の展開 サービスの簡単な説明 ShineChainAPP(闪链互助)は、闪链(北京)信息科技有限公司とShineCha …

中国 ブロックチェーン

MEITUがブロックチェーンホワイトペーパーを発表。ICO以外でブロックチェーンはどのように使用されるのか?

1月22日、セルフィー加工アプリで中国を席巻するMEITUがブロックチェーン技術のホワイトペーパーを発表した。 発表されたブロックチェーン技術は”MEITUインテリジェントパスポート&#8 …

Binance バイナンス

デジタル資産取引プラットフォーム「Binance(バイナンス)」が1千万ドルのエンジェルラウンド融資を受けた

今日、ブロックチェーン会社のBinance(バイナンス)が泛城資本(ファンシティ・キャピタル)と黒洞資本(ブラックホール・キャピタル)から1千万ドルのエンジェル融資を受けたことが確認された。泛城資本は …

Chaitech

中国Tech企業情報プラットフォーム