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開発者への奨励をデザインするNebulas

投稿日:2018年7月25日 更新日:

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Nebulasは、中国語で”星云链”と呼ばれている仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトです。中国では彼らのプロジェクトを、ブロックチェーン業界のGoogleを目指すプロジェクトである、と例えることが多いようです。

しかし、ホワイトペーパーを眺めた限りでは、彼らのプロジェクトの最も特徴的な部分は、そのトークンエコノミーのデザインにあるように見受けられました。

Nebulasブロックチェーンは、NAS(星云币)トークンを奨励として使用し、開発者がNebulasというコミュニティに参与する動機付けを行うようにトークンエコノミーを設計しています。

これによって、Nebulasプロジェクトは、自律的に進化するブロックチェーンシステムを作り出すことを目標として掲げており、開発者の視点に立ったプロジェクトとして、どのように問題解決を行うのかが注目される点だと思われます。

目次
■プロジェクトの背景
■アルゴリズム、時価総額等
■創業者やプロジェクトチームについて
■今後の展開

プロジェクトの背景

Nebulasプロジェクトでは、NR、NF、DIP、そして後述するコンセンサスアルゴリズムPoD等によって、コミュニティに貢献する開発者がより多くの報酬を得られるようブロックチェーンをデザインしています。

まず、Nebulasは、NR(Nebulas Rank)と呼ばれる指標を、公正なアルゴリズムを通すことによって、ブロックチェーン上のアカウント、そしてスマートコントラクトやDApps等に付与するとしています。

ホワイトペーパーの中で、このNRは、Googleの検索エンジンが採用するページランクと類似したものであると記されており、彼らは、NRによって、ブロックチェーン上の情報を重要度によってインデックスするとしています。

たとえば、彼らは、Nebulasブロックチェーン上で様々な活動をおこなった開発者アカウントが、NRによって評価されるとしています。

また、Nebulasブロックチェーン上のアカウントは、NRによって投票権を有することによって、投票によるコミュニティの総意を決定することが可能となります。

次に、彼らは、NF(Nebulas Force)と呼ばれる機能によって、ハードフォークとコミュニティの分裂を防ぐとしています。

既存のブロックチェーンプロジェクトでは、たとえば、そこに参加する開発者が、新しいテクノロジーをプロジェクト内で挑戦しようと考えた場合、コミュニティ全体を説得するか、コミュニティの同意が得られなければハードフォークを行い別のブロックチェーンとして開発を行うか選択することでしか、新しい挑戦を続けることが出来ませんでした。

Nebulasは、NFによって、コミュニティに参加する開発者が開発を行った後、コミュニティへ投票を促し、新しいテクノロジーを採用するのかどうかを決められるとしています。

たとえば、彼らは、今後、NFによって、メインチェーン以外の子チェーンで開発したテクノロジーも、メインチェーンに移植できるようにするとしており、それらが可能になれば、Nebulasブロックチェーンは、様々なテクノロジーを取り入れていく基礎が整えられることとなります。

そして、彼らは、DIP(Developer Incentive Protocol)というプロトコルによって、ブロックが生成される一定間隔ごとに、スマートコントラクトやDapps開発者アカウントへNASトークンによる奨励を行うとしています。

彼らは、直近期間のNRによって貢献度の高かったアカウントを選出することによって、Nebulasコミュニティのポジティブな発展が可能となるとしており、コア開発者以外のエンジニアも、このプロトコルによってNebulasコミュニティ発展への貢献が促されることとなります。

アルゴリズム、時価総額等

NASトークンの時価総額は、2018年7月現在、170億円ほどとされています。

Nebulasのコンセンサスアルゴリズムは、先述のとおりPoD(Proof of Devotion)と呼ばれるメカニズムが採用されています。

PoDもまた、NRによって選出されたアカウントが報酬を得られるシステムとなっており、コミュニティに貢献した開発者が、コンセンサスアルゴリズムへも参与し報酬を得ることを促しています。

彼らのPoDでは、まず、NRによって選出されたアカウントによってグループを作り、その中からランダムにブロック生成者を選ぶとしています。

また、ブロック生成後は、NRによって選出されたアカウントによるBFT(Byzantine Fault Tolerant)方式の投票がおこなわれ、そのブロックの認証を行うとしています。

創業者やプロジェクトチームについて

Nebulasプロジェクトの創始者は、NEOの共同創始者である徐义吉とされています。

また、Nebulasプロジェクトの共同創始者には、同じくNEOの共同創始者である王冠が名を連ねています。

彼らのプロジェクトが、今後、NEOとどのような関係を築くのかといった視点も、中国の仮想通貨プロジェクトとして注目される点かもしれません。

今後の展開

Nebulasプロジェクトは、そのホワイトペーパーの中で、現在存在する様々なブロックチェーンプロジェクトは、それぞれのコミュニティの参加者から、多くの期待が寄せられていると記しています。

また、同時に、ブロックチェーン技術の進化は未だ続いており、この先、最終的にその技術が一定の到達点に達するまでには、まだまだ遠い道のりが必要だと予想しています。

彼らのプロジェクトは、そのような現状を踏まえた上で、今後のブロックチェーン技術の進化に併せて、Nebulasブロックチェーン自体も自律進化できるように設計されているように見受けられます。

たとえば、ビットコイン等の非中央集権的な仮想通貨プロジェクトでは、コア開発者と呼ばれるエンジニアたちによって、日々、そのブロックチェーンのバグが最適化され、必要に応じてソフトフォーク等のバージョンアップが行われています。

しかし、既存のオープンな仮想通貨プロジェクトでは、このソフトフォークのためにコミュニティ全体で同意を得ることは難しく、ビットコインキャッシュやイーサリアムクラシックの誕生のように、ハードフォークによってコミュニティが分裂する危険性が存在しています。

これは、一つの仮想通貨プロジェクトに参加する、コア開発者、マイナー、ユーザー、投資家等の利益が必ずしも一致しないことによるものかもしれません。

たとえば、多くのコア開発者は、マイナーや投資家に比べて、ブロックチェーンへの貢献度が高いにもかかわらず、保有するトークン量が相対的に少なく、トークンが世の中に普及する等のプロジェクト成功による恩恵を受けづらい傾向にあります。

これまでの仮想通貨プロジェクトでは、そのプロジェクト自体の思想や、主導するチームの魅力によって、それらコア開発者をコミュニティに参与させたり、またはプロジェクトを推進するための財団を作り、コミュニティに貢献するコア開発者へ報酬を与えるなどの施策によって、プロジェクトの競争力を確保してきました。

しかし、それらのやり方は、果たして本当に永続的な透明性ある報酬をエンジニアにもたらすことが出来るのでしょうか。

Nebulasでは、先述したNR、NF、DIP、PoD等の仕組みによって、開発者がコミュニティに貢献する動機付けを行っていると考えられます。

この仕組みが、上手く機能すれば、彼らが目指す自律的に進化するブロックチェーンが続いていくことになるのではないでしょうか。

参照 
・https://nebulas.io/docs/NebulasTechnicalWhitepaperZh.pdf
・https://nebulas.io/docs/NebulasWhitepaperZh.pdf
・https://nebulas.io/cn/team.html
・https://www.zhihu.com/question/64583649
・https://steemit.com/cn/@zzzzzyuan/nebulas-nas
・https://www.jianshu.com/p/5e4f7aad16ea

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