現在、日本の一般的な仮想通貨ユーザーは、金融庁に認可された仮想通貨取引所を利用し、日本円(法定通貨)を基軸とした仮想通貨の売買を行っていることと思います。
しかし、中国では、2017年に行われた規制から·、日本の取引所のような法定通貨と仮想通貨のペアを売買可能とする取引所の運営は難しくなっています。
それでは、現在、中国で仮想通貨を売買したいユーザーは、どのように法定通貨を仮想通貨に替え、市場に参加しているのでしょうか。
この記事では、2018年上半期までの中国系取引所の動向を振り返りながら、今後の中国系仮想通貨取引所の発展可能性を探ってみたいと思います。
目次
■2017年までの動向
■2018年上半期の動向
■中国以外の世界の動向と中国の比較
■今後の予想
2017年までの動向
2017年までの中国の人民元を扱う仮想通貨取引所は、BTCC(比特币中国)、Huobi(火币网)、OKCoin(币行)という三箇所の取引所が大きなマーケットシェアを持っており、その影響力は中国のみならず、世界規模の大きさとなっていました。
しかし、2017年に行われた中国の仮想通貨に対する一連の規制は、9月4日のICO規制を境にして、取引所の運営についても非常に厳しいものとなりました。
前回の記事(仮想通貨・ブロックチェーンを巡る2018年上半期までの中国政府動向.txt )でも記述したとおり、仮想通貨という存在は、中国という国家にとって、マネーロンダリングやキャピタルフライト等リスクの温床となりかねません。
事実、2016年末から2017年初頭にかけては、中国人民銀行が主導するマネーロンダリング対策等を理由に、上記3箇所の取引所も一部の機能を制限された運営が続けられていました。
そして、2017年9月、中国は、「9月4日の暴風雨」と称されるICO規制を筆頭に、最終的には中国国内での法定通貨を扱う取引所の運営を停止させるに至りました。
当時の中国では、Huobi(火币网)、OKCoin(币行)を含めた複数の取引所の責任者や高官、出資者等が、調査協力という名の下、北京を離れることを制限されていたという報道も存在しており、その規制の背景に、中国金融当局のマネーロンダリング等に対する強い意志が存在することが見え隠れしています。
2018年上半期の動向
上記のような中国の強硬な規制を経たあとも、2017年下半期のビットコイン価格は上昇を続けました。
そういった仮想通貨全体の価格上昇は、多くの中国の取引所が海外に拠点を移し運営を行う動機に繋がったと考えられます。
現在のところ、上記の取引所は、全て中国以外の海外(香港・マカオ・台湾含む)へ拠点を移し、Huobi(火币网)、OKCoin(币行)は既に運営を再開させ、BTCC(比特币中国)も近く運営を再開するとされています。
しかし、2017年の中国の仮想通貨取引所に対する規制は、それまで大きなマーケットシェアを握っていた取引所以外の、新しい取引所の台頭を許した形となりました。
コインマーケットキャップ(coinmarketcap.com)によると、2018年7月14日現在の仮想通貨取引所の24時間出来高ランキングでは、Fcoinが1位、バイナンス(Binance:币安)が3位、OKEX(OKCoin運営)が4位 、Huobiが9位となっている事が確認できます。
当然、出来高だけで取引所を評価することは出来ません。また、これらFcoin、バイナンス、OKEX、Huobiといった4箇所の取引所は、中国系の取引所という共通点以外にも、法定通貨を使用した通貨ペアを取り扱っていないという共通点も存在するため、その他の法定通貨を扱う取引所と同列に語る際は注意が必要であることも確かだと思います。(Fcoin、バイナンス、OKEX、Huobiは、USDT等を基軸とした取引ペアが存在します)
それでは、新しく台頭したFcoinやバイナンスといった取引所は、どのようにして現在の地位を手に入れたのかのでしょうか。以下に簡単にまとめてみようと思います。
まず、バイナンスは、中国国外ではCZと呼ばれている赵长鹏によって2017年7月に開設された取引所です。
赵长鹏は、もともとOKCoinの共同創業者兼CTOを務めていた人物であり、彼によって立ち上げられたバイナンスは、ユーザー視点に立った運営を基盤とし、世界の仮想通貨ユーザーたちに支持され、現在の地位を築き上げました。
バイナンスは2017年後半に起こったアルトコイン等の仮想通貨全体の価格上昇をユーザーに届けるようにして取扱通貨の数を迅速に増やし、巨大なユーザー群の獲得に成功しました。
また、バイナンスは、2017年7月に開設された当時から、法定通貨を一切取り扱ってはおらず、中国で初となる仮想通貨ペアのみを扱う取引所として誕生していました。
バイナンスが設立された当初は、法定通貨を扱わない彼らの取引所出来高は大変少ないものだったそうですが、2017年9月4日のICO規制から始まった中国国内の取引所閉鎖といった規制環境下では、逆に、法定通貨を扱わない彼らの運営方針が、中国国外へ運営基盤を移す上で好都合だったと予想されます。
次に、現在世界の取引所のなかで出来高1位をほこるFcoinについて記します。
Fcoinは、元HuobiのCTOであった张健が中心となって2018年5月(1月に成立)に運営が開始された新しい取引所です。
Fcoinが運営開始から僅かな期間で出来高1位となった背景には、取引所独自のトークンを付与する「取引マイニング」という新しい概念が存在すると考えられます。
この「取引マイニング」によって、Fcoinはプラットフォーム上で取引された取引手数料の同等相当にあたる取引所独自トークンFTをユーザーへ付与するそうです。
また、FTトークン保有者はFcoinの収益の一部を受け取れるだけではなく、Fcoinの意思決定にも参加できる仕組みとなっているとされています。
たとえば、現状では、この「取引マイニング」をするために、2つのアカウントで同値決済を交互に自動取引すれば、Fcoinの取引所出来高は必然的に上昇することとなるため、現在のコインマーケットキャップに表示される彼らの出来高を、他の取引所の出来高と同列にしてはいけないといった指摘も存在しています。
ただし、ホワイトペーパーによると、この「取引マイニング」によるFTトークンの付与は、51%のFTトークンがマイニングされるまで続くそうですので、彼らの出来高や取引所としての性質を判断するには、もう少し時間がかかるものと考えられます。
中国以外の世界の動向と中国の比較
上記のとおり、2017年9月から仮想通貨取引所を追い出した形となった中国ではありますが、国外に脱出した取引所自体は、独自の経営理念に基づいて世界のマーケットを相手に現状大きな成功を収めていると見られます。
現在の中国では、法定通貨を扱う取引所は規制されていますが、多くの仮想通貨ユーザーがlocalbitcoins.com等のP2P方式のOTC取引所を利用し、法定通貨をビットコイン等の仮想通貨に替えています。
そして、そのような中国のユーザーのなかには、そのビットコインを、さらにバイナンス等に移し、アルトコイン等へ替えているといった実体が存在しているようです。
また、中国のユーザーは、そのようなP2P方式のOTC取引所で、AlipayやWechatpayを使用しているとされています。
中国のメディアによると、2017年11月の時点で、LocalBitcoinsの49%の売方が人民元の振込先にAlipayを選択しており、CoinColaでは81%がAlipayを選択しているそうです。
また、BTC/CNY(ビットコイン/人民元)のOTC取引は、中国の取引所規制後から大きく増えているとしています。
日本を含めた中国以外の国では、仮想通貨取引所に対して、KYCの厳格化やマネーロンダリング対策が行われていますが、そういった取引所を利用する仮想通貨ユーザーの中にも、中国のユーザーと同じく、法定通貨を特定の取引所でビットコイン等の主要な仮想通貨に替えたあと、それをバイナンス等に代表される取引所に移し、アルトコイン等に再び交換している事例も多く存在するものと思われます。
このような構造には、KYCが厳格化され国の認可を得た取引所と、P2P方式のOTC取引所といった「中間地点」の違いは存在しますが、最終的にユーザーが求めているものを提供しているのは、バイナンスのような中国系取引所なのかもしれないという示唆が含まれています。
今後の予想
当然、アルトコインの多くは、ICO同様、詐欺も多く、実際に利用シーンを作れるものも多くないだろうと各方面から指摘されていますし、日本でも、金融庁に認可されていない取引所を使用することは、完全なる合法行為とは言えないのかもしれません。
また、中国政府は、AlipayやWechatpay等の仮想通貨取引に使われているアカウントを規制しており、こういったOTC取引が、中国でグレーゾーンであることは変わりありません。
しかし、中国国外に飛び出したバイナンス等の仮想通貨取引所は、現在、ユーザーからの大きな支持を手に入れており、その取組みは、すでに中国という枠組みを超えて、世界の仮想通貨の枠組みとなろうとしています。
仮に、今後、中国政府が取引所を認める場合、ライセンスの発行か、もしくは国営資本による取引所運営か、現在の中国では色々な噂が飛び交っています。
もし、中国国内で再び仮想通貨取引所がオープンされたとき、現在海外で様々な取り組みを行っているバイナンス等の彼らが、中国に齎す利益は、大きいものとなるかもしれません。
また、現在の中国系取引所が持つパワーは、競争原理を超え、仮想通貨の持つイノベーションの可能性を広げる領域にまで及ぶかもしれません。
今後も、彼ら中国系取引所の動向に注目してみたいと思います。
参照 ・http://baijiahao.baidu.com/s?id=1603238965821652826&wfr=spider&for=pc ・http://baijiahao.baidu.com/s?id=1585478278907323718&wfr=spider&for=pc ・https://www.sohu.com/a/232620293_100094816 ・http://www.360doc.com/content/17/1228/00/36338847_716889146.shtml ・http://tech.sina.com.cn/roll/2017-12-12/doc-ifypnqvn3547360.shtml ・https://baijiahao.baidu.com/s?id=1588218167693657526&wfr=spider&for=pc ・https://wallstreetcn.com/articles/3031256 ・https://www.goldtoutiao.com/articles/3012760 ・http://8btc.com/thread-179200-1-3.html ・https://bitcointalk.org/index.php?topic=2134467.0 ・http://finance.sina.com.cn/blockchain/coin/2018-04-28/doc-ifztkpip2834593.shtml ・https://www.jinse.com/news/bitcoin/68638.html ・https://www.zhihu.com/question/62883228 ■中国ユニコーン企業100社以上総まとめ一覧 ■【Chaitech(チャイテック)編集長の想い】チャイナ(China)とテック(Tech)に愛(ai)を込めて ■今後のChaitechの方向性