普段ゲームをしない方でも、”荒野行動”というゲームの名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
荒野行動は、中国のIT企業ネットイース(网易:NetEase)傘下の会社が開発したゲームです。このゲームは、正式配信からわずか数ヶ月で全世界の登録者数が2億人を突破するほどの人気コンテンツとなりました。
しかし、現在では、そのゲームシステム等がPUBG(PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS)というゲームと酷似しているとして、知的財産権を巡る争いが発生しています。
PUBGというゲームは韓国の会社が開発を行っていますが、その会社には中国のIT企業であるテンセントが出資をしています。
テンセントはBATと呼ばれる中国の三大IT企業の一角を占める企業ですが、同時にゲーム業界でも彼らの影響力は非常に大きく、それは中国ゲーム業界第一位と目されています。
一方のネットイースも、もともとは中国でポータルサイトを運営していたIT企業ですが、現在では、テンセントに次いで、中国ゲーム業界第二位と目されるまでになっています。
荒野行動とPUBGの知的財産権を巡る争いは、中国のゲーム領域で競合他社関係となっているテンセントとネットイースの争いではないかとも推測されており、そのような関係は、そのまま、中国IT業界でも荒野行動というゲームが注目される理由の一つになっていると考えられます。
また、ネットイースは、越境eコマースを行うネットイースコアラ(网易考拉)というサービスを2015年から運営しています。
中国の越境eコマース領域に限れば、ネットイースコアラのサービスは、テンセントと共にBATの一角を占める中国eコマース界の雄であるアリババをも凌ぐと評価されています。
このようなネットイースの実績からは、インターネット業界においてポータルサイトというサービスの価値が相対的に下がっている環境下においても、彼らが新しい挑戦を常に続けていることが確認できます。
同時に、そういった試みがあるからこそ、現在のネットイースは、中国というマーケットにおいて、ゲーム業界での地位確立と越境eコマースサービスの成功を実現したものと考えられます。
この記事では、上記のような、巨大企業にも飲み込まれず競争と挑戦を続けるネットイースというIT企業が行う、ブロックチェーン技術を使用した取り組みをご紹介したいと思います。
目次
■ブロックチェーン技術によってデータの価値を個人に還元する
■ゲーム×ブロックチェーン
■ネットイースは今後もブロックチェーンに注力していく
ブロックチェーン技術によってデータの価値を個人に還元する
ユーザーがインターネット上で活動する記録(データ)は、それが集積され正しく分類されることによってビッグデータという価値のある資源を生み出します。
多くのインターネット人口を誇る中国マーケットでは、その可能性が早くから議論されており、同時に、ブロックチェーンを使用したビッグデータの活用となるデータ取引も注目されてきました。
ネットイースは、ブロックチェーン技術を使用することによって、ユーザーのデータの価値を、ユーザー個人に還元すると掲げています。
彼らが展開している”网易星球”というブロックチェーンに基づいたプラットフォームは、ブロックチェーンが持つ透明性によって、ユーザーへデータの価値を確かに還元し、同時に、ブロックチェーンが可能とするプライバシー保護の仕組みによって、安全なサービスを展開するとしています。
彼らは、そのプラットフォームのために、イーサリアムを基底としたブロックチェーンを開発していますが、そこではコンソーシアム型ブロックチェーンを構築することよって、非常に高いスケーラビリティを実現しています。
ユーザーは、网易星球を通し自身のデータをどの程度まで提供するか選択することによって、暗号化技術によってプライバシーを守りながら提供したデータのインセンティブを安全に受け取れるとされています。
また、ネットイースは、网易星球のブロックチェーン開発で培った技術を基にしたNBaaS(NetEase Blockchain as a Service)を2018年9月に発表しており、今後は様々なシーンで、そのソリューションの活用が期待されています。
ゲーム×ブロックチェーン
冒頭でもご紹介した通り、ネットイースはゲーム企業としても中国で大きな支持を集めています。
そして、彼らがサービスを開始したNBaaSプラットフォームは、今後、ネットイースが開発したゲームにもそのサービスを提供するとしています。
2018年9月、ネットイースは、”逆水寒”というネットゲームで使用されるゲーム内通貨に、ブロックチェーン技術を使用すると発表しています。
逆水寒は、2017年7月からクローズドβテストが展開されているMMORPGであり、ネットイースのゲームプロジェクトにおいては、今後10年以上開発が続けられると予想されるビッグタイトルの一つと期待されています。
このゲームは、温瑞安という作家によって書かれた同名の小説をゲームの世界観として設定しています。
逆水寒の原作小説は、これまでにテレビドラマ化がされているなど、中国の大衆小説の人気ジャンルである武俠小説の中でも、非常に有名な小説の一つとなっています。
ネットイースが開発するMMORPGとしての逆水寒は、原作小説の世界観を幻想的なゲームへと転換することによって、これまでに非常に良好な評価を受けています。
彼らによれば、ゲームの中で使用される”伏羲通宝”という通貨が、ブロックチェーン技術に基づいた仕組みとなっているそうです。
中国のメディアによっては、そのゲーム内通貨を仮想通貨と表現する記事も存在しており、現在までその流通はゲーム内に留まっていることが予想されますが、ブロックチェーン技術を基底とした”通貨”として、伏羲通宝が今後どのように使用されていくのか注目されます。
また、伏羲通宝は、ネットイースが開発したNBaaSの初となる応用事例とされており、今後は、ゲーム内のアイテム等のデータにも、そのブロックチェーンが使用されるのか期待されます。
ネットイースは今後もブロックチェーンに注力していく
ネットイースのブロックチェーン部門責任者である顾费勇は、彼らの取り組みについて、ブロックチェーンを使用した2C(ユーザー向け)の応用を続けることについて語っています。
彼曰く、ブロックチェーン技術は未だ発展途上であり、2B(企業向け)のサービスを展開するよりも、2Cサービスを展開するほうがネットイースにとって適しているとしています。
また、ネットイースのCEOである丁磊は、2018年3月の中国人民政治協商会議において、ブロックチェーン技術を様々な問題を解決するテクノロジーと肯定しながらも、それを過大評価させ資金調達を行う事等の問題を提起しています。
上記でご紹介した”网易星球”と”伏羲通宝”もまた、彼らが行うブロックチェーンを使用した2Cサービスの試みであり、今後もネットイースからはそのような2Cへの提案がなされていくものと予想されます。
一方で、中国では、仮想通貨を巡る規制が続いているため、ゲーム中通貨である伏羲通宝は、ネットイース自らがその流通を外部に橋渡しすることは難しいと考えられます。
しかし、たとえば第三者となるプラットフォームがその流通を可能とした場合、彼らはどのようにそれに対処するのか、そのような問題は、今後注目される点だと考えられます。
参照 ・https://baijiahao.baidu.com/s?id=1596145231767317582&wfr=spider&for=pc ・https://baike.baidu.com/item/%E7%BD%91%E6%98%93%E8%80%83%E6%8B%89/22641111?fr=aladdin ・https://baike.baidu.com/item/%E7%BD%91%E6%98%93%E5%85%AC%E5%8F%B8/2696086?fromtitle=%E7%BD%91%E6%98%93&fromid=185754 ・http://tech.163.com/18/0917/10/DRTB3HJA000998GP.html ・https://baike.baidu.com/item/%E9%80%86%E6%B0%B4%E5%AF%92/19138414 ・https://baike.baidu.com/item/%E6%B8%A9%E7%91%9E%E5%AE%89/143471 ・https://baike.baidu.com/item/%E9%80%86%E6%B0%B4%E5%AF%92/5070293 ・https://www.chainlab.tech/portal/article/index/id/60006.html ・https://star.8.163.com/ ・http://tech.163.com/18/0323/23/DDKD8L2E000998GP.html ・https://36kr.com/p/5129913.html ・https://baijiahao.baidu.com/s?id=1611847909982235467&wfr=spider&for=pc ・https://n.163.com/bao/#gnxq ・http://www.twoeggz.com/news/10943647.html ・http://bbs.nga.cn/read.php?tid=14968864&rand=766 ・https://n.163.com/ ・https://www.zhihu.com/question/293492335 ・https://www.baidu.com/s?ie=utf-8&f=8&rsv_bp=1&rsv_idx=1&tn=baidu&wd=NBaaS%E3%80%80Blockchain%20as%20a%20Service&oq=NBaaS&rsv_pq=ad15967800004c0e&rsv_t=5edbtJG6xckLrDX023CVZu%2BWeYrP%2BBjklBeO04dThBkAREvYSq1BuGpqZXw&rqlang=cn&rsv_enter=1&inputT=845&rsv_sug3=3&rsv_sug1=2&rsv_sug7=100&rsv_n=2&rsv_sug2=0&rsv_sug4=1111 http://tech.163.com/18/0304/10/DC21DGJI00097U7R.html ■中国ユニコーン企業100社以上総まとめ一覧 ■【Chaitech(チャイテック)編集長の想い】チャイナ(China)とテック(Tech)に愛(ai)を込めて ■ご支援パートナー様募集と今後のChaikuruの方向性