【要約】
・アリババはAIデザイナー”ルバン”によって双十一期間中、4.1億枚の広告バナーを作成した
・アリババの開発した人工知能ETによって萧山では120の救急車が現場へ駆けつける時間が半分に縮小された
・AIは政府能力や伝統的な業界に結びつけられ社会問題を解決する
一つの技術からシナリオ実現まで、AIはひっそりと2.0時代への躍進を進めている。
中国は我々の想像を超えた速度で、国家レベルのAI産業化を推し進めている。
最新のビックニュースは、中国科学技術部(日本の文部科学省にあたる)が11月15日に発表した新世代AIの発展計画と中国国家科学技術プロジェクトだ。
このプロジェクトには、中国科学技術部と中国国家発展改革委員会等の15の部門で作る新世代AI発展計画推進事務室が含まれ、27名の有識者によって成る中国新世代AI戦略諮問委員会が中国のためにAIを使用・発展させるための情報提供を行っていく。
科学発展領域の計画を推し進めるために中国の複数の部門が連携することは珍しく、そのためこの計画はメディアによって”中国AI Moonshotプロジェクト”と呼ばれている。また注目すべきは、計画の中でアリババ、テンセント、バイドゥ、アイフライテックという中国国内のAI技術を先導する4社が中国国家新世代AI開放イノベーションプラットフォームの第一陣に選ばれたことだ。
この中で、バイドゥは自動運転、アリババは都市頭脳(シティブレイン)、テンセントは医療映像、アイフライテックはスマートオーディオをサポートすることとなる。
この4つのうち、アリババのシティブレインは最も中国の市民生活に密接に関わる、シナリオの着地点が予期しづらいプロジェクトだということは簡単に見て取れる。しかも、直近のアリババが運営するT-mall(天猫)双十一ショッピングセールの熱狂、また、アリババはeコマース企業だという我々の印象は、AIという単語に多少マッチしないかもしれない。
事実としては、T-mallが双十一中に新しく披露した販売システムにAIを見て取る事が出来るし、アリババクラウドから出た人工知能ETプロジェクトを見れば、アリババAIのシナリオ実現能力により作られた包括的なシステムによって産業レベルから実際的な運用までが非常にクリアになっているということが分かる。あるいは、我々はこれらの事柄を一つにまとめ、より広い視野においてアリババAIのシステムを読み解いていくことが出来るかもしれない。
この中には一つの認知が埋まっている。一つの技術からシナリオ実現まで、AIはひっそりと2.0時代への躍進を進めている。
再構築と到達:AIはアリババの業務を再び繋ぎ合わせた
私には一人ネットショッピング依存症気味の友達が居る。最初、彼はこう聞いてきた。双十一は買い物するだけでしょ?AIが何をするんだ?しかし、私が少し説明すると、次に彼はこう聞いてきた。双十一でAIに出来ない事がほかにまだある?
当然まだAIに出来ないことはある。しかし、双十一においてはあまりに多くのAIの影が見て取れる。
例えばT-mallとタオバオはAIによるお薦め商品を全ての顧客の好みに一致するよう表示させる。カスタマーサービスには対話式AI技術を引用した補完を行い、物流システムの精度向上、高速化と無人化をAIシステムによってリンクさせている。より具体的なシーンでもその裏にはAIが居る。たとえば消費者がどのような服装の組み合わせが良いか知りたいと思えば、タオバオのファッションAIがアルゴリズムによって問題を解決してくれる。
取引の支払い、検索、広告、在庫、流通管理等のシステムの中で、今年の双十一においてAIは複雑で精密な人と機械の共同システムを描き出した。
総合的に見て、T-mallの双十一が打ち出した新しいシーンの中でAIはほぼ全ての固有業務体系を再構築
した。AIはまるで複雑なエンジンの中に入れられたエンジンオイルのように、人と共同し、またエラーが発生してしまう機械の側にも立ち、全てのシステムを滑らかに高効率に動かし目標の達成を成し遂げた。
AIと言う名のエンジンオイルはT-mallの隙間に注ぎ込まれた。我々はそのうち3つ、はっきりとした改変を見て取れる。
1、より高効率な采配:AIを通して動くお薦め機能、カスタマーサービス、取引と物流は、各部分の連携効率を高めた。例えば今年の双十一ではAIによる購買ビックデータの分析モデルが採用され、双十一が始まる前から物流システムは売れる商品を消費者に最も近い倉庫に移動させていた。その際、実際に物流倉庫でロボットによって行われた商品の仕分けは人間の処理速度を超えていた。これは購買ビックデータから物流システムまでをAIによって繋ぎ合わせ、消費者を更に満足させる効果があった。
2、より高効率な変化:AIは双十一中、機械学習と画像認識によって顧客サービスと商品のお薦め、販売までを行う役割を担った。たとえば先程書いたファッションAIやお薦め機能等によって消費者の購買行動をより早める計画を行った。これは伝統的な人による販売方式では実現出来ない高効率化だ。
3、人とロボットの共同作業:最も重要なのは中国で社会行動と化したショッピングイベントを処理することだ。データ処理やそのプロセスをビジネスモデルに繋ぐことは複雑だ。ただ単に人間の能力を使っただけではこの任務の達成は不可能だろう。人工知能がもたらした人とロボットの共同作業は今年の新しい販売形態を掲げたT-mallの双十一を、不可能だと思われた数字を更に超えて任務を終わらせた。こんなジョークが広まったのも頷ける。”以前の双十一では技術者が奮闘していたが、今年の双十一では技術者はお茶を飲むだけだ。”
AIはまるでスライムのように静かに双十一の全システムの中に入り込んだ。外見上からその違いを感じ取ることは難しいかもしれないが、AIの知覚と理解が可能にする人とロボットの共同作業はT-mallの双十一を新しいレベルまで引き上げた。
人とロボットが共存する森:アリババ新経済はAIによって動く
スーパープラットフォームと先端技術が結合したもの、それはまるで泉のようだ。プラットフォームは内部の技術能力を保持し、一定のラインに到達した技術という名の水分は外に向けて流れ出してプラットフォームの周りに広がる全ての生態系に注ぎ込まれる。
新しい販売形態の破壊思想は社会化された販売の現場を大きく揺り動かし、更に多くの社会資源が参与することによって全く新しい経済を構築増大させると我々は予想できる。これは販売業が中心となり伝統的な意味での業界間の垣根を超えて繋がっていく。それは人が認知できる境界線を超えて広がることが出来る。中国と世界の協同、異なるビジネスの協同、商品とサービスの協同、それら全てを今年のT-mall双十一が体現した。
ここには一つの問題がある。それはアリババのプラットフォームを通した独自の技術だけで完成するものでは無いということだ。これからAI等の新技術が販売店舗やブランド等、パートナーのシステムに多次元の成長を与える必要がある。
T-mall双十一中になされたアリババAIのアウトプットは、店舗に技術革新の必要性やその魅力を伝えていった。
今年のT-mall双十一でアリババは多くのAI製品とAIサービスを開放し、パートナーへの権限付与を定制化した。たとえば特に目立ったのはAIデザイナーの”鲁班(ルバン)”だ。総合的な画像認識、ディープラーニングや強化学習等のAI技術によって、それはまるで人間のデザイナーと同じように下書きから構図の構築、細部の要素までを一貫してデザインする。これは販売店舗とブランドがショッピングセール中にデザイナー資源の不足から適切な広告バナーを作れないという問題を高いレベルで解決した。双十一期間中、ルバンは4.1億枚の商品バナーを作り、最大レベルでデザイナーの負担を軽減した。また同時に店舗のコスト増大を抑え、双十一という高負荷作業期間にも耐えてみせた。
極限の条件下でブランドと店舗がAIデザイナーの良さを知った以上、その能力を通常の経営に組み入れるのは想像に難しくない。それは恐らく既存のデザイナーも恐怖していることだろう。
同じように、AIカスタマーサービス” 蜜ちゃん”はカスタマーサービスの負担を軽減し、AI”天巡”はデータの安全を確保した。全てのAI能力が双十一で急速に到達点に達した。
アリババ生態圏に広がるAIの泉は、より大きな協同の可能性を生むだろう。AIが販売店舗のツールとなったのはその能力の一端に過ぎないのだ。
“Moonshot”のささやき:人工知能ETはAI時代に宣告する
少しトリッキーな角度ではあるが、アリババクラウドが提供している双十一の問題解決と他のAIが繋がっているということを我々は考える必要がある。例えば双十一という複雑な事は上手くやった。それではAIが他に出来ることはまだ遠い未来にあるのだろうか?
“中国国家AI Moonshotプロジェクト”に参加している人工知能ETのシティブレインから、工業ブレイン、環境ブレイン、医療ブレイン等等を見ていけば、アリババAIはこの疑問に答えてくれるかもしれない。
知っておかなければいけないのは、双十一という複雑な環境はAIが身を投じるにはとても難易度の高いものだということだ。AIは大きなデータを前にし、今まで挑戦したことのないトラフィックのストレス下で集中運算任務を行うことになる。もちろんそれが複雑な物理ネットワークである可能性もある。
様々な業務プロセスのAI化、協同ネットワークの権限付与テストなどを経て、アリババクラウドによるAIの問題解決能力は検証された。
販売のシーン以外でアリババクラウドはAIによる問題解決の方法とAI能力のラインナップを別の産業に移植することが出来るのかは、全てのAI産業が注目する問題だ。
強力なAIが物理世界と協同する能力は、新しい販売システム以外でもアリババクラウドによって証明されている。中国の杭州、苏州、マカオ等の地区でシティブレインである人工知能ETはその価値を証明してみせた。杭州シティブレインは既に128個の信号機とリンクし、その地域の渋滞を13.5%改善し、高架橋道路の走行時間を4.6分縮小させた。都市部ではシティブレインが1日平均500以上の通報を処理し正確率は92%になる。萧山では120の救急車が現場へ駆けつける時間が半分に縮小された。
これらのことから、アリババが推し進める人工知能ETによるシティブレイン、工業ブレイン等の問題解決能力はAIの利用によって中国の政府能力や伝統的な業界を助け、社会問題を解決すると我々は見て取ることができる。
AlphaGoのように人類に勝つことで我々に宣告するのと同じように、中国の国家新世代AIプロジェクトに参加した人工知能ETとアリババAIはAI時代の到来にこう宣告する。”AIは架空のことではない、我々はそれを信用し協同し、それを利用して実際的な問題を解決できる。”
アリババにとって、”Moonshotプロジェクト”は自身のAI産業に於ける優位を証明することになる。AIが普及し次々と新しいAIが現れる今日にあって、それは非常に貴重である。
翻訳元:http://www.sohu.com/a/205465673_114819