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暮らしの中に入る人工知能:テンセントの知られていない技術とは。テンセントのAI事業への驚異的な投資。

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中国 AI 人工知能

【要約】
この2年のテンセントAI投資に注目すべき、AI IN ALLとの全社戦略はかなり浸透している、
テンセントの様々なAI関連技術と製品を一挙紹介。

 


テンセントユーザー公開日

12月9日から12月10日にかけて、テンセント(騰訊)社が本社の近くに巨大な正方形のボックスを設置し、ヒップホップAIミキサー、感情的な森、未来のニューススタンドなど25のクリエイティブかつインタラクティブな装置を通じて、同社の最新技術を一般向けに紹介した。これはテンセント初の 一般向け大規模な公開日インタラクティブ・イベントである。 数千人もの市民が今回の体験型イベントに参加した、この素晴らしい展示の裏に、テンセントが進めている技術の蓄積と将来の取り組み方向を伺うこともできた。

 


AI IN ALLは社内競争から始動する


テンセント社がこの2年、AI(人工知能)分野において、大規模な投資をしていることはもはや秘密ではない、AI IN ALLはすでにテンセントの全社戦略になってきた。 近年では、テンセントはAIへの取り組みを強化し、囲碁AIアプリケーションの「絶芸」、スマート音声の「小微」などの製品が相次いで登場した。 2013年以降、テンセントは捜狗(Sogou)、Scaled Inference、Skymind、Diffbot、Carbon Cloud Intelligenceなどの人工知能関連企業に次々と投資してきた。

2017年第2四半期報告において、テンセントは直近、囲碁人工知能、顔認識、医学用画像などの分野で大きな進展を遂げ、今後も引き続き投資を拡大し、機械学習・コンピュータビジョン・音声認識及び自然言語処理などの技術力を強化すると表明した。

 

AI RAP 「ミキサー」


今回の公開日イベントでは、テンセントの3つのAI研究室――テンセント優図(Youtuo)、微信智聆(WeChat Appreciation)とテンセントAI LABが一挙に登場した。一時話題を呼んだ軍人服変装アプリのYou Tuoは、今回「四川オペラ変面」の形で登場し、驚異的な顔認識能力を見せてくれた、微信智聆は音声認識と処理能力を「バベルの塔合戦」ゲームの形で展示された、体験者は音声で入力して、バックエンドで文字テキストに変換できる。テンセントのAI LABは、最も人気のあるRAPの形で、認識された画像を歌い上げることができ、体験者を楽しませる……

以前テンセント会長の馬化騰氏はWeChatがはやった理由を説明するときに、テンセントの社内競争の仕組みについて語ったことがある。同時に複数の製品開発が進められていることがあり、どちらが成功するかは、ユーザーが決めたことになる。 これは、恐らくテンセント社内に複数のAIチームが存在する理由でもある。 但し、別の視点から見ると、テンセントが人工知能の分野における蓄積は、テンセントの未来展開に大きな可能性と優位をもたらしてくる。

 

テンセント AI LAB


もちろん、これらの3つのAIチームは、それぞれ孤立した存在ではなく、技術の面において、重複している部分もあるが、それぞれ独自の強みも持っている。 これらの技術は、テンセントの長年のデータ蓄積と技術活動により、成長してきたものである。 AI LABは、コンピュータビジョン・音声認識・自然言語処理・機械学習などの分野における人工知能の要素技術研究に注力して、またコンテンツ・ソーシャルネットワーキング・ゲーム・プラットフォームツール型AIの4つの方向において、研究開発と応用提携を並行で進めてきた。

テンセント優図研究室は、画像処理・パターン認識・機械学習・データマイニングなどの分野で、技術研究開発や実用化に焦点を当て、研究開発の成果物は主にQQスペース・QQチャット・天天P図などの製品に利用されている。

WeChat智聆は主に音声認識・画像解析・語彙解説・WeChatビッグデータマイニングなどを主要な研究方向として、研究開発の成果物は主にWeChat及びテンセント関連製品に利用されている、一例として、WeChatの音声テキスト変換・声紋認識・テレビ番組でのシェイク抽選などに活用されている。

 

オープン AI:「脱センター化エンパワーメント」に拘る


「テンセントにとって、当社で貫いている核となる考えは、「繋がり」にある」とテンセント社の某責任者が記者に語った。「我々の技術を適切な利用シーンに適用し、より多くパートナーとマッチングして、 より多くのサービスを繋げたい。」

公開日当日、テンセント社と優必選社(UBTECH)が共同でロボットAlpha Ebot及びアスースと共同で開発したZenbo Qrobotも登場した。 これらの取り組みはテンセントが自社の人工知能において、洗練された技術を外部に出力する重要なサインとなる。 AIスピーカーを例にすると、現在各インターネット大手企業が相次いでAIスピーカー商品を打ち出したが、テンセント社の動きはまだ見られていない。

テンセントジングルとUBTECHが共同開発したロボット- Alpha Ebot


「我々は主にテクニカルサポートの立場である、AIスピーカー・車・スマートホーム・スポーツなどの利用シーンでのスマートアプリケーションをサポートしてきた」とテンセントクラウド小微のプロダクトマネージャーの周棟超氏が「チタンメディア」の記者に伝えた、「しかし、我々は他のスマートホームプラットフォームとの繋がりにも対応している。当社の音声アシスタント製品のテンセントクラウド小微の場合、我々は音声アシスタントのSDKを提供し、すべてのAIスピーカーがテンセントクラウドに繋ぐことができる、またもし他社がスマートホームプラットフォームを有する場合は、 テンセントクラウド小微はこのコマンドを第3者のプラットフォームに「送信」でき、そちらで処理させることもできる。」

これはまさに馬化騰氏が先日広州で開催された「フォーチュン」フォーラムで提唱した脱センター化エンパワーメントと合致している。馬化騰氏は「エンパワーメントの最終構造を見ると、エンパワーメント側のセキュリティレベル、運命、利益などがセンター化したエンパワーメント側に握られ、テンセント社がやろうとしているのは、脱センター化エンパワーメントである。」

周棟超氏が説明したテンセントクラウド小微は、テンセント社が今年年初にテンセントクラウド上で開発した音声アシスタントであり、小微はテンセントが社内の複数の人工知能チームの技術成果を統合したものである。人工知能研究開発において、テンセントクラウド小微が統合された技術として、テンセント優図・WechatWechat智聆及びAI LABのそれぞれ強みを持った3つの技術チームを統合した。一例として、音声認識、語彙解析などが鼻歌認識と関連するので、音楽担当のチームも巻き込んだ。

「単純に技術の観点から見れば、既に長年の研究開発が行われた従来型企業と比べて、技術の格差はもうかなり縮まってきた」と周棟超氏が正直に語った。但し、技術における同質化の傾向もあり、この分野で勝負の鍵となるのは、より多くのコンテンツとサービスを保有することである周棟超氏が表明した。「この面において、当社は音楽と動画のリソース両方に優位を持っている。」

 

テンセント小微とアスースが共同で開発したロボット-Zenbo Qrobot


今回の展示は、記者にとって、一番印象的なのは、ユーザーがテンセントクラウド小微を搭載したAIスピーカーにより、自分のWechat連絡先にメッセージを送信できることである。また、同じく小微システムに接続された製品なら、音声アシスタントを通じて、端末同士の連携を実現できる。テンセント社内に既存リソース間の統合ができているため、人工知能アシスタントに利用できるのは、テンセントがコンテンツにおける最大の強みである。

もちろん、テンセントクラウド小微にもテンセントの競合理念が現れている、社内からの直接対決に直面している。開放日会場で、テンセントと優必選が共同で開発したロボットに搭載されているのはテンセント社内の別の音声アシスタント製品の「テンセントジングル」である。両製品がどのように競争するかはまだ分からないが、一つ言えることは、この2つのチームの目標は一致している――すなわちより多くのパートナー、より多くのハードウェアメーカーを繋げることである。

 

AI応用の商用化営利を求めない


実際には、小微テンセントを生み出しただけではなく、テンセントは人工知能の実用化においても、着実に進んでいる:「騰訊覓影」とは、医師の診断を支援できる人工知能の応用例である。 「覓影」の開発責任者が言うには、「アルゴリズムをトレーニングするときに、当社のエンジニアと医学専門家との密な連携が必要とされている。」、このような業界を跨る医療用人工知能はテンセント社内の3つの主要人工知能研究所のコア技術を統合したという。

顔認識と異なり、医療などの専門分野では、モデルトレーニングやチューニングは最も時間と手間が掛かる。 モデリングの精度が十分高ければ、広範囲で応用できるようになってから、医療資源不均衡の課題対策に、重要な役割を果たすことができるだろう。 特定の地域や都市部の主要病院に最も優秀な医師を抱えているが、それ以外の地域なら、若干レベルが落ちるだろう。 これらの地域にいかに医療資源をカバーさせるか? 高精度人工知能医療診断モデルなら、かなり役に立ち、特に癌の早期検診を支援できる。

 

騰訊覓影


医師は「騰訊覓影」を利用して、1枚の食道画像で良性か悪性かを4秒以内に識別でき、検診効率を向上でき、生検部位の検診精度を改善し、内視鏡手術時間を短縮でき、最終的に早期食道癌の検出率を向上させることができる 。農村地方病院の医師でさえも、「騰訊覓影」システムの指示を受けて、上級医と同じ検診結果を得ることができる。というのは、農村部病院の医師が操作するときも、あたかも隣に休まない上級医がサポートしてくれるようである。 地域別の医療レベルの格差を低減でき、患者に質の高い診断と治療サービスを提供できる。これは中国国家が進めているレベル別診断・治療の目標と合致している。

 

AI画像認識能力のほか、騰訊覓影がAI診断支援にも積極的に取り組んでいる。


テンセント AI Labの技術を活用して、騰訊覓影のAI診断支援の第一歩として、自然言語処理(Natural Language Processing、以下NLP)により、権威ある医学文献・診断医療ガイドラインと医療履歴などの大量な医療情報を習・理解・要約させ、自動的に大規模な「医療ナレッジマップ」、いわゆる機械頭脳の「医療ナレッジベース」を構築する。第二歩として、リードしている深層学習技術を利用して、大量な臨床診断事例を学習させてから、数十万のマシンやエキスパートによる診断データと比較させてから、継続的なにモデルを最適化して、診断能力を向上させ、医療画像・検診結果および病歴に基づいた多次元の深層診断を得る。 これにより、具体的な病症予測を行い、医師により良い診断のための判断材料を提供し、より迅速、効率的に病歴と病症を理解でき、診断治療の効率を向上できる。 このような取り組みは、テンセントのAI領域における蓄積と社内技術連携を示している。

 

騰訊覓影体験


「騰訊覓影」は、単一病種から複数病種への利用展開を実現した、さらに中国全国複数の市の10数の主要病院と共同研究室を設立し、全国100近くの病院と提携の合意に達し、地域から全国への応用展開を実現した。 騰訊覓影も早期食道癌検診から肺結節、糖尿病性網膜症、子宮頸癌、乳癌などの検診まで展開した。

但し、覓影プロジェクトはまだ実験段階にあり、大規模な展開まで至っていない。開発責任者の話によると、彼らはまだ商用営利のプレッシャーがないという、「このプロジェクトは、より多くの医師を支援するだけでなく、我々にとっても、AIが未来の実用化に向けた重要な試みモデルとなる。」 彼はさらに、「医学分野における人工知能利用も、長い期間の検証が必要とされている。」と語った。

 

VR技術取り組みからみたテンセントの危機感


今年、テンセント傘下のゲーム「王者栄耀」は既に「大ヒット」ゲームになっている。今回の公開日にも欠かせない存在である。テンセントは、モーションキャプチャー技術をキャラクターに取り入れ、体験者はカメラの前で、キャラクターを自分と同じ動きをさせることが可能である。体験者の操作により、クールなイメージの王昭君と蘭陵王も、面白いダンスや太極拳を披露させることができる。

王者栄耀のほか、臨場感あふれるVRゲームも存在感が高い。 今回体験できるゲームは、通常のシューティングゲームもあり、テーブルゲーム「VR ラッキーナイト」(テキサスホールデム)もある。 テンセント・インタラクティブ・エンタテインメント・フロンティアテクノロジーセンターの関連責任者は、このゲームでは、業界の「VRゲームの最大プレー時間は15分まで」との定則を破って、多くのプレイヤーに存分に遊ばせることができると語った。

 

王者栄耀キャラクター「蘭陵王」とのインタラクション


VRゲームをこの数年ブームを経て、現在はもう冷え込んだようだが、それにしても新しい技術の成長曲線に沿っている。ゲーム自体の発展として、最も古い文字テキストMUDゲームから2次元ゲームへ、さらに3 Dゲームへと、画面の技術の進歩に伴って、ゲームのシミュレーション度と臨場感がどんどん高まっている。もちろん、VRが次世代の重要なゲームプラットフォームの一つになるのは間違いがない。

VR技術が日に日に成熟しており、プレイヤーがゲームを遊ぶときに、ますます臨場感を体験できるようになった。 但し、テンセントにとって、VRのような新技術に注目することは、次世代のゲーム土台に注目することになる。
テンセント社内のゲーム研究開発部には、研究室が設置され、彼らはさまざまなゲームハードウェアデバイスの動向に注目したり、購入したり、体験したりしている。 彼らにとって、いかに次世代のハードウェアプラットフォームを作るのはコアの部分ではなく、コンテンツやソーシャルに注力している会社として、いかに新しいプラットフォームで適切なコンテンツを作成することは彼らの関心事である。

 

KATVRが開発した周辺機器 – 「VRユニバーサルランニングマシン」

 

考えてみれば、もしみんなが簡単かつ広範囲でテキサスホールデムないし「プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ」ゲームを、VRオンラインの形で遊ぶことができれば、オンラインとオフラインでのソーシャル及びゲーム体験にはどのような新しい変化をもたらすだろう?

テンセント社がつねに新技術に注目していることから、同社が技術に対する危機感を伺える。 これはテンセントがPCの時代とモバイルインターネットの時代において、ソーシャルおよびコンテンツにおける絶対優位を保てる理由でもある。このような危機感は、企業側にとっても、社内での継続的な変革を促すこともでき、想像を超える化学反応を起こしてる。

 

VRゲーム体験を待つプレーヤー達

「公開日」イベントからも、テンセントが人工知能において生み出した成からも、テンセントのユーザー及びパートナーたちに同社の技術に対する理解——「インターネットを通じて、より多くのユーザーとサービスを繋げること」伺える。イベント会場で、Wechatにより繋がった各種サービス、例えば公共用の交通機関決済、社会保障用の顔認識・認証、警務用の電子運転免許証などが一番多く展示された。

インターネットの大手企業として、テンセントは様々な分野において、国内ないし世界でリードしている、業界全体における新しい方向性を探る責任を担っている。 記者の取材に対して、テンセント関係者は、「例えば、VR/AR業界の場合、以前ほどブームではないが、我々は引き続き探索している、それは巨大企業や先駆者としての責任である」と述べた。 公開日イベントにより、一般的なユーザーに「テクノロジー・ブラックボックス」をより良く知る機会を与え、またテンセントの技術に対する理解と先駆者としての責任も示した。 そのようなテンセントは、きっと次の世代でも、引き続き前向きに進めるだろう。

翻訳元:http://www.sohu.com/a/209920829_116132

 

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