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FacebookやGoogleの出身者たちがDappsプラットフォームを開発するQuarkChain

投稿日:2018年9月1日 更新日:

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QuarkChainは、GoogleやFacebookといった企業で分散型システムに携わっていたとされる周期(Qi Zhou)という人物が中心となって立ち上げられた仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトです。

中国の仮想通貨メディアでは、QuarkChainを”夸克链”と呼び、イーサリアムやZilliqa等と競合するDappsプラットフォームプロジェクトであるとする解説が存在しています。

QuarkChainブロックチェーンは、シャーディングという技術を使用し、高いスケーラビリティを備え、その能力は将来的に100万TPSをも実現すると期待されています。

また、彼らは今後、そのブロックチェーン上にイーサリアムの仮想マシン(EVM)を開発し、QuarkChain上でイーサリアムのSolidity言語によってスマートコントラクトやDappsを動かせるようにするとしています。

目次
■プロジェクトの背景
■アルゴリズム、時価総額等
■創業者やプロジェクトチームについて
■今後の展開

プロジェクトの背景

現在までに、多くの仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトが、Dappsプラットフォームとなることを掲げ様々な挑戦と開発を行っています。

しかしながら、そのような挑戦の裏には、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題が存在しており、特に大規模なサービスをDappsで行うためには、高いTPSを実現することが求められ、これまでもイーサリアムを始めとした様々なプロジェクトがその解決に向けた取り組みを続けていました。

たとえば、現在世界的に使用されているといえるクレジットカードのVisaは、そのシステムで56000TPSを処理するとされていますが、一方で、非中央集権化された仮想通貨・ブロックチェーンの筆頭とも呼べるビットコインやイーサリアムは、その能力が数TPS~20TPSほどとされており、非中央集権化されたブロックチェーン技術が実際に人々の生活の中で使用されるためには、スケーラビリティ問題の解決が必要不可欠だとされていました。

そして、これまでにも、ブロックチェーン界隈では、スケーラビリティ問題の解決を謳う様々なプロジェクトが誕生しており、QuarkChainは、そのようなブロックチェーン技術のスケーラビリティ問題へ挑戦するプロジェクトの一つとされています。

彼らは、そのプロジェクトの特徴として、高いスケーラビリティを備えながら非中央集権性と安全性を損なわないQuarkChainブロックチェーンの設計を挙げています。

これまで、一般的なブロックチェーン技術の革新性としては、非中央集権と安全性という2つの特性が挙げられることが多く,その背景にはブロックチェーンのトリレンマとされる、スケーラビリティ(Scalability)、非中央集権(Decentralization)、安全性(Security)の3つを全て実現することは困難なのではないかといった議論が存在しています。

つまり、これまでのブロックチェーン技術では、スケーラビリティ問題を解決するためには、非中央集権か安全性のどちらかを犠牲にしなければならないと言った認識が一部で存在しており、QuarkChainプロジェクトは、そういった認識を覆す挑戦であると考えられます。

アルゴリズム、時価総額等

QuarkChainブロックチェーンのQKCトークンの時価総額は、2018年8月現在20億円ほどとされています。 また、QuarkChainブロックチェーンではビットコイン等と同じコンセンサスアルゴリズムであるPoWが使用されています。

しかしながら、QuarkChainブロックチェーンのPoWは、そのブロックチェーンの設計の違いから、多少異なったものとなっているようです。

QuarkChainブロックチェーンには水平スケーラビリティ(スケールアウト)を可能とする設計が行われているとされており、そのためのソリューションとしてシャーディング技術が使用されています。

シャーディング自体は、グーグル等の大規模で利用率が高い分散システムに使用されている技術であり、Zilliqaやイーサリアム等のプロジェクトも、現在または将来的にシャーディング技術を実装するものとされています。

たとえば、既存のインターネットサービスでは、ユーザーが増え実際的なキャパシティが必要になった場合、垂直方向に2倍のハードウェアを追加し物理的な限界を単純に増やすことが可能ですが、そのためのコストは2倍以上必要となってしまうため、シェーディング技術はそのような問題を解決するソリューションとして使用されています。

同じように、これまでの様々なブロックチェーンプロジェクトもまた、スケーラビリティ問題を改善するために、ブロック容量を増やしたり、新しいコンセンサスアルゴリズムを設計したりしてきましたが、非中央集権と安全性を損なわずに根本的なスケーラビリティ問題を解決することはなかなか難しいことだとされてきました。

QuarkChainは、ルートチェーンレイヤーとシャーディングレイヤーという2つの層をもつブロックチェーンを設計し、シェーディングレイヤーの中でシェーディング技術を使用しています。

彼らのコンセンサスアルゴリズムでは、まず、シャーディングレイヤーがPoWアルゴリズムによって分散化された記帳を行い、その後、それらの分散化された記帳情報をルートチェーンレイヤーが同じくPoWアルゴリズムによって認証していくそうです。

彼らのホワイトペーパーでは、ルートチェーンレイヤーの認証にネットワークの計算力の50%以上を使用するよう設計を行うことにより、スケーラビリティ(Scalability)、非中央集権(Decentralization)、安全性(Security)の3つを全て実現することを掲げています。

創業者やプロジェクトチームについて

冒頭でも述べましたが、QuarkChainプロジェクトの創始者は周期と呼ばれる人物です。

周期は、これまで、北京大学(2006年卒業)と上海交通大学(2009年まで)、ジョージア工科大学 (2013年まで)でコンピュータエンジニアリング等を学び、FacebookやGoogle等で分散システムに関わってきた人物とされています。

また、彼らのWebサイト上に紹介されているプロジェクトチームの中で周期の次に並ぶ王兆光という人物も、これまでにFacebookとGoogleでエンジニアとして活躍していたとされており、彼らがそれら企業のシステムにおいて、シャーディング技術を実際に運用・開発していたことが予想できます。

創始者の周期は、プロジェクトを立ち上げたきっかけについて、Facebookに務めていた当時に何人かの同僚とした何気ない日常の無駄話を挙げています。

曰く、彼らは、その会話の中で、ブロックチェーン技術について語り合うことになったそうです。

その時、周期は、一部の同僚が、ブロックチェーン技術についてほとんど何も知らないことを発見し、いまこの時こそがチャンスであると考えたそうです。

彼らのプロジェクトチームは、周期と王兆光以外にも、中国をバッググラウンドとしながらアメリカのシリコンバレーで活躍していた人物たちが多く参加しており、中国の仮想通貨メディアでは、彼らを技術力のあるシリコンバレー派のプロジェクトであると紹介する記事も存在しています。

今後の展開

QuarkChainプロジェクトでは、今後の重点的な取り組みとして、イーサリアムの仮想マシン(EVM)実装と、ユーザーがブロックチェーンを意識せずに使用できるスマートウォレットの開発、そしてQuarkChainブロックチェーンのメインネットへの移行を挙げています。

とくに、イーサリアムの仮想マシン(EVM)は、QuarkChainのスケーラビリティを使用して既存のイーサリアムDappsを可動させることをも可能とするため、それが実装されれば、まだ誕生して間もない彼らのプラットフォームとしての競争力に大きな影響を与えると考えられます。

中国では、彼らが設計したPoWコンセンサスアルゴリズムについてその安全性を疑問視する声も存在しますが、QuarkChainプロジェクトは未だメインネットに移行していないため、彼らがホワイトペーパーで掲げたスケーラビリティ(Scalability)、非中央集権(Decentralization)、安全性(Security)というトリレンマが、はたして全て実現出来るのか、今後も注目してみたいと思います。

もしもこのトリレンマを彼らが解決すれば、それはブロックチェーン技術そのもののバージョンアップになるのではないでしょうか。

参照 
・http://baijiahao.baidu.com/s?id=1603139472732876058&wfr=spider&for=pc
・http://toutiao.manqian.cn/wz_1i546gRqbh.html#
・http://www.sohu.com/a/243080438_114877
・http://baijiahao.baidu.com/s?id=1602714496044028250&wfr=spider&for=pc
・http://a.sfw.cn/new/504761.html
・https://block.cc/news/5afe828863608e235288861d
・https://www.bitnews.vip/23636/
・https://www.quarkchain.io/
・https://quarkchain.io/QUARK%20CHAIN%20Public%20Version%200.3.5.pdf
・https://quarkchain.io/20180510QuarkChain%E4%B8%AD%E6%96%87%E7%99%BD%E7%9A%AE%E4%B9%A63.4.pdf
・https://coinmarketcap.com/ja/currencies/quarkchain/
・https://www.jinse.com/blockchain/205198.html
・https://www.jinse.com/news/blockchain_tech/215039.html
・https://www.chainnews.com/articles/402775567681.htm

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