QTUM(Quantum)は、シンガポールを拠点とするQtum財団(量子链基金会)が中心となって展開している仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトです。
QTUMは、中国語で”量子链”や”量子币”と呼ばれ、創始者である帅初という人物の経歴などからも、中国の仮想通貨プロジェクトの一つであるといった認識が広く共有されています。
彼らは、2017年3月にICOを行い、たった5日間のうちに1500万米ドル相当以上の資金調達を成功させたことで一躍ブロックチェーンコミュニティの有名プロジェクトとなりました。
現在の彼らはスマートフォン等のモバイル端末に特化したウォレットやDappsプラットフォーム、スマートコントラクトのエコシステム構築に向けてプロジェクトを展開しています。
また、彼らは、スマートコントラクトを実社会と連携できるよう、QTUMブロックチェーンへ向けてデータをインプットするDataFeeds技術や、そのインプットデータの信用(トラスト)を判断するOracle等の技術開発を続けており、それらの実際的な運用は、全てのブロックチェーン産業の未来へも大きな貢献となることが期待されます。
目次
■プロジェクトの背景
■アルゴリズム、時価総額等
■創業者やプロジェクトチームについて
■今後の展開
プロジェクトの背景
QTUM創始者である帅初は、多くの場面でQTUMについて以下のような説明をしています。 まず、ビットコインが持つP2Pを使用した価値のネットワークは、シンプルで安全な信頼出来るものとなっていますが、そのビットコインのネットワークを応用し別の価値を生み出すことは現状難しくなっています。
一方、イーサリアムはビットコインの概念を昇華し、チューリング完全とも言える応用性あるスマートコントラクト技術を実現しましたが、イーサリアムは応用性がありすぎることによって、セキュリティリスクを生んでいると彼は定義しています。
彼曰く、QTUMは、ビットコインの採用するUTXOベースに基いた、イーサリアムのようなスマートコントラクト・Dappsプラットフォーム構築を実現するとしており、簡単にまとめるならば、ビットコインの安全性とイーサリアムの応用性を兼ね備えた新しい仮想通貨を作るプロジェクトであるそうです。
彼らは、IOTや金融業界のビジネスケースで実際的にQTUMのブロックチェーンが使用されることを目標に掲げており、そのためのデジタル身分認証等もこれから実現していくとしています。
アルゴリズム、時価総額等
QTUMの時価総額は、2018年7月現在840億円ほどとされています。
また、現在のQTUMはコンセンサスアルゴリズムとしてPOSを採用していますが、彼らは将来的にIPOSというPOSを調整したメカニズムを採用するとしています。
彼ら曰く、新しく採用するIPOSでは、長い時間オンラインとなっているノードに対して通常よりも多くの報酬を与えられるよう設計し、レガシーなPOSメカニズムでは見逃されていた、ネットワークへの貢献度合いに比例した奨励を行うそうです。
その上で、レガシーなPOSメカニズムではノードの起動時間がネットワークの安全性に影響してしまうといった課題を解決するため、IPOSでは、ノードの最少オンライン時間の制限を撤廃し、多くのノードが少ない時間ネットワークに参与するだけでセキュリティを担保できるようにしたいとしています。
彼らが掲げるIPOSは、巨大なノードが支配するPOSメカニズムを否定し、多数の小さなノードが支えるメカニズムを構築しようとしているのかもしれません。
また、QTUMをベースにして開発されたDappsのコンソーシアム型ブロックチェーンでは、Proof of TimeとRaftを融合させた新しいコンセンサスアルゴリズムが採用されており、それは非常に高いスケーラビリティを実現するとしています。
創業者やプロジェクトチームについて
QTUMの創始者は先述のとおり帅初という人物であると中国では知られています。
彼のニックネームは英語のものも含めると、Patrick Dai、Patrick Shuai、Steven Dai等、数多く存在しており、おそらくは”帅初”という中国語名もニックネームの一つだと考えられています。
彼がCTOとして関わっていたbitSE(上海鼎利信息科技有限公司:)の登記情報によれば、彼の本名は”戴旭光”という中国語名だと推測されます。
この中国姓:”戴”の字は、ローマ字で”Dai”と表記されるため、現在、彼がTWITTERでも使用しているPatrick Daiという英名にも合致しています。
帅初は、2015年には《从0到1建立自己的区块链(0から作るブロックチェーン)》というブロックチェーン開発者向けの技術指南となるインターネット記事を発表しているなど、中国のブロックチェーンコミュニティでは、海外の情報を中国に伝えるキーパーソンとされていたようです。
当時から彼はbitcointalkでhero memberの称号を持つほどアクティブに活動しており、そういった背景は、2016から2017年にかけてのQTUMプロジェクトに繋がっていったものと考えられます。
彼はこれまでに多くの仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトに関わってきていましたが、QTUMプロジェクトは彼の知名度を一気に押し上げたと言え、2017年には、アメリカのフォーブスが選ぶ中国の30歳以下エリート30人にも選ばれるなど、その影響力は中国の仮想通貨・ブロックチェーンコミュニティの中で非常に大きなものとなっています。
現在の帅初は、中国、シンガポール、韓国、日本、アメリカ、ヨーロッパ等の世界各国へQTUMを広めるべく飛びまわっていると語られており、プロジェクトを率いる創始者として、コミュニティ拡大の働きかけを行っているようです。
また、QTUMのプロジェクトは、中国の仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトであるとされていますが、その先導に立つQtum財団(量子链基金会)は、先述のとおりシンガポールを拠点として活動しています。
そういった環境もあってか、現在のQTUMの開発メンバーの中には、中国以外の国をバックグラウンドとする多くのエンジニアが参加しており、こういった多国籍な人員によるメンバーによる開発状況は、現在のその他の中国の仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトとは多少異なる部分かもしれません。
今後の展開
現在のQTUMは、その能力をビジネスケースに利用できるよう、スケーラビリティを20,000TPSまで高めることを目標に掲げており、そのための発展が期待されています。
中国では、当初、QTUMの開発コードはビットコインやイーサリアムからの盗用だといった指摘も存在していましたが、QTUM創始者の帅初は、オープンソースで開発されているブロックチェーンプロジェクトとしてのQTUMの開発の方針を説明し、ビットコインとイーサリアムのコードを参考にしたことを認めつつ、これは盗用に当たらないと語っていました。
しかし、現在のQTUMプロジェクトでは、イーサリアムとの相関性の良さを武器とする開発可能性も語られるようになっており、こういったビットコインとイーサリアムのコードを背景とした資産を、今後どのように活用していくかも、QTUMに期待される特徴だと考えられます。
また、彼らが進めているモバイル向けDapps開発を実現するプラットフォームの構築は、現在の人々の生活環境に無くてはならないスマートフォンを通してブロックチェーンをより身近に感じることが出来るようになるといった側面だけではなく、さらに言えば、スマートフォン市場という巨大マーケットを狙う挑戦でもあると考えられるため、その発展は、多いに期待されるものであると考えられます。
参照 ・https://qtum.org/zh ・https://qtum.org/user/pages/03.tech/01.white-papers/%E9%87%8F%E5%AD%90%E9%93%BE%E5%8C%BA%E5%9D%97%E9%93%BE%E7%BB%8F%E6%B5%8E%E7%99%BD%E7%9A%AE%E4%B9%A6%EF%BC%88%E8%8D%89%E6%A1%88%EF%BC%89.pdf ・https://qtum.org/user/pages/03.tech/01.white-papers/[2016-08-01]Quantum-White-Paper-v0.6-CN.pdf ・https://yunbi.com/documents/archives/bi_28 ・http://www.8btc.com/build-your-own-blockchain ・https://www.sohu.com/a/229176358_99981833 ・http://www.qukuaiwang.com.cn/zhuanlan/fenlei/132612.html ・http://www.8btc.com/qtum-0314 ■中国ユニコーン企業100社以上総まとめ一覧 ■【Chaitech(チャイテック)編集長の想い】 ■Chaitechの方向性