目次
■前のめりに進むBAT(百度,アリババ,テンセント)のブロックチェーン活用
■この市場はスターアップにチャンスはあるのか
■中国スタートアップのブロックチェーン事例
■スマートコントラクトをどう金にするか
■医療との相性がいいブロックチェーン
■成功と失敗が半分に分かれる―――ICOプロジェクト
■イーサリアムがプラットフォームになるのか
■テンセントは医療の領域でブロックチェーンを活用する
■ブロックチェーン領域、BATが飲み込むのか、スタートアップにチャンスはあるのか
前のめりに進むBAT(百度,アリババ,テンセント)のブロックチェーン活用
ブロックチェーンの実態は、非中央集権(弱中央集権)化されたデータベースである。このデータベースはトレサビリティー機能や改ざん耐性といった特性を備えている。 しかし、このブロックチェーンを使用してどのようにマネタイズを実現するのか。例え、ブロックチェーンプロジェクトの責任者を務める人物であっても、その答えを知る者は少なく、さらに彼らは、自らのプロジェクトの価値を正確に評価する方法を持っていない。
2009年にサトシ・ナカモトがビットコインを発表してから、もうすぐ10年が経とうとしている。ビットコインの基礎技術となっているブロックチェーンもまた、少しずつ、人々にその名前が知れ渡っている。
プラットフォーム制作といった角度から見れば、ブロックチェーン技術は既に成熟した技術であると言える。しかし将来的にこれを新しい領域に応用しようとするならば、それは爆竹の火薬でロケットを飛ばすような難易度となる。
現在、多くの暗号通貨のプログラミングコードはビットコインとイーサリアムのプログラミングコードを基にして作られている。多くのブロックチェーン開発者がそういった開発モデルを採用しており、それは彼らに開発時間の削減をもたらし、余剰時間を使用したブロックチェーンの更なる発展を可能としている。
そして、ある種の尺度から眺めれば、上記のようなオープンソースでの開発と、クローズドソースでの開発は、相対的なものとなる。
テンセントクラウドは4月3日にTBaaS(Tencent Blockchain as a Service)ホワイトペーパーを発表し、これによって彼らはブロックチェーンサービスを立ち上げた。しかし、テンセントクラウドはこのサービスをオープンソースの原則に基いているとしているが、実際的にはテンセントクラウドという強力なプラットフォームのサポートも無く、他の企業がオープンソースを使用することは難しくなっている。
それ以外に、バイドゥ金融も、早くからLinux Foundationによって開始されたHyperledgerプロジェクトの中心メンバーとなっていることも忘れてはならない。また、アリババもプライスウォーターハウスクーパース(PwC)と提携し、透明性あるトレサビリティー機能を越境ECの食品サプライチェーンに立ち上げようとしている。 BATは既に早くからブロックチェーンへの取り組みを全面的に始めているのである。
アリババのブロックチェーンへの取り組み
テンセントのブロックチェーンへの取り組み
バイドゥのブロックチェーンへの取り組み
オープンソースでの開発モデルがこれからも続くのか、それとも転覆性を持つリスク等の存在によってクローズドソースでの開発に移行していくのか、我々はまだそれを知ることは出来ない。しかしながら、結局の所、殆ど全ての業界では分散化された無秩序を集中化された秩序あるものに変えているように、ビジネスでは熱力学の法則を遵守せずにエントロピーを逆転させることも可能である。 ブロックチェーン技術が目まぐるしく発展していくのと同時に、世界のブロックチェーンプロジェクトは、どのようにマネタイズを実現する計画なのか、我々は、それについて振り返ってみたい。
ブロックチェーン市場はスターアップにチャンスはあるのか
創業したばかりのスタートアップ企業がなぜブロックチェーンプロジェクトに身を投じるのか、それは、そこに大きなチャンスが眠っているからである。どのような企業であろうとも、自身の理念をもって既存のエコシステムを覆し、自身が作ったエコシステムに通貨を流通させるチャンスが存在する。
スタートアップ企業自身が一定の通貨を保持し、余った一部分の通貨をマイニングさせる。通貨の総量が一定で、エコシステム内での流動性が高く、通貨の需給量が更に増え取引量が通貨量を上回れば、通貨の価値は必然的に上がる。
しかし、代替品が存在しない状況下において、上記のようなアイデアから通貨は作られる。現在少なくないチームがクロスチェーン技術の開発を行っており、将来、異なる領域のブロックチェーンがリンクされれば、最終的に通貨とデータは自由に流通し、取引所すら必要がなくなる。
そのような状況下では、ある一つのチェーンを使った通貨がエコシステムに与える影響は大きくない。おそらく、古典的な通貨理論のように、通貨価格が需給関係に従うといった単純な説明は難しくなる。設計者は、マクロ経済の角度からこの問題を考える必要がある。
また、ブロックチェーンプロジェクトでは、すべての人が、この新しい領域で新しい規則を作ることが可能であり、非中央集権化されたシステムの管理者になることも出来る。これは、ブロックチェーンプロジェクトが人々から魅力的に映る理由でもある。
その時になれば、ブロックチェーンのオーナーは、その領域の全経済をコントロールする能力を持つことになる。通貨価格の吊り上げや叩き売りは、将来、業界に大きな影響を与える。
しかし現在までのところ、一つの企業すら、そのような偉大な成果を手にしてはいない。例えイーサリアムが輝かしいイーサリアム連盟を作ったとしても、ブロックチェーン領域全てを独占する効果は得られない。
従って、スタートアップ企業は表面的には依然として発展の可能性を残している。しかし、彼らが抱える法律問題、政策問題は、深く検討する価値がある。
XCAREの目指すエコシステム(XCAREホワイトペーパーから)
中国スタートアップのブロックチェーン事例
企業へサービスを提供するためのブロックチェーンプロジェクトで採用されている主要なビジネスモデルでは、クラウドストレージのセキュリティ上の容疑者をトレサビリティー可能とするとともに、改ざん耐性を持つブロックチェーンサービスを提供し、データセキュリティの最大化を追求している。
BurstIQは、データシェアプラットフォームを運営するブロックチェーン・スタートアップ企業である。彼らはまた、ブロックチェーン+医療領域でマネタイズに成功した唯一の企業でもある。
彼らの主要なビジネスモデルは、データストレージサービスとデータエクスチェンジサービスからサービス料と手数料を得ることが含まれている。
中国国内でも、BurstIQと類似のサービスを行う巢智联、边界智能、魔链科技等のスタートアップ企業が多く存在している。しかし、それらの各企業は卓越した技術を持っているが、マネタイズという視点では、現在もその実現のための取り組みが続けられている状況である。
また、現在のところ、テンセントクラウドのTBaasが、この領域に進出しただけではなく、さらに、金融、サプライチェーン、IoT、医療等の多くの領域をカバーするサービスを提供しており、おそらく、将来、顧客を開拓・争奪する競争はより一層むずしいものとなる。
スマートコントラクトをどうカネにするか
スマートコントラクトとは、まるで自動執行される契約のようなものである。そこでは、マシンが人に変わり契約の有効性を判断し、強制執行を行う。
スマートコントラクトの実態は一つのプログラミングコードである。しかしブロックチェーンはトレサビリティーと改ざん耐性という特性を持っており、そのプログラミングコードはトラストレスなメカニズムの下、自動的に運行される。ブロックチェーンは、スマートコントラクトを運用する上での前提条件なのである。
実際的な状況下で、スマートコントラクトを通してマネタイズを行える機会は非常に広範囲に存在する。医療保険は、その中でも一つの良い例である。
医療保険の保険金支払い過程には、大量の伝票と専門的な情報が関わっている。これらの情報は、一般市民にとって、繁雑で理解することが困難なものであり、患者は契約の条款を読んでも、保険金の支払いが何時どのようになされるのか、見定めることが非常に難しい。
スマートコントラクトを使用すれば、こういったブラックボックスとも呼べる問題を解決し、患者はマシンを信頼するだけで良くなる。
その保険金支払いの過程では、スマートコントラクトが審査を行い、情報を分類し、中間業者の介入を防ぐことを可能とする。また、その記録は誰にも壊されることが無く、患者は、契約書の文字が見えづらいなどの状況に多くの時間を浪費せずに済む。
しかし、ある種のレベルから見れば、スマートコントラクトの運営者自身が中間業者となり、スマートコントラクトを通して自動的に手数料を得る構図となっている。この種の特殊な仲介サービスは、顧客のコストを大幅に抑え、実質的に高効率なサービスを実現する。
効率は欠いていなくとも、顧客を欠いている。これもまた企業が積極的にプラットフォームを立ち上げる原因である。
医療領域以外では、もう一つビジネスモデルが挙げられる。Catalyst(MITのブロックチェーンプロジェクト)の証券管理サービスである。 Catalystはファンドトレーダー、仮想通貨投資家、データ管理者等のユーザーを対象にして、ユーザーがデータをシェアし整理することを助ける。また、利益の出るデータ駆動型投資戦略を構築する。
全ての過程において、Catalystの分析過程は匿名となっている(これはクローズドソースがブロックチェーンの中に存在していることを意味する)。また、ユーザーは投資のポートフォリオのみを見ることが可能となっており、フリーライダー方式でトレード戦略をコピーすることは不可能となっている。
この種のマネタイズモデルは伝統的な証券業界のビジネスモデルに類似しており、これはまた、医療領域も参考とすることが可能となっている。将来的には、全ての疾病診断がマシンによって行われるだろう。さらに、医療領域では、金融領域のようなブラックボックス方式を採用しないことによって、全ての診断過程が記録され、それによって機械学習は医師よりも早く診断能力を身に着けることが可能となる。そういった未来では、それまでは見抜けなかった疾病の関連性を発見しているかもしれない。
医療との相性がいいブロックチェーン
少なくない企業がブロックチェーンコミュニティの中で自身の専門領域を作っている。遺伝学者であるChurchが主導するNebula Genomicsもまたその一つであると言える。
消費者はNebulaの提供するDNAシーケリングサービスを受けた際、法定通貨での支払いを行うことは出来ず、必ず法定通貨をNebulaの発行するトークンに替えなくてはならない。
多くの者が法定通貨をこのトークンに替えることに従い、NebulaはDNAデータを核心としたブロックチェーンプラットフォームを構築することに成功する。そして、それは将来的に、より正確な医療サービスの発展に繋がる。
総じて言えば、この種のビジネスモデルは実際的なテクノロジーに依存している。プロジェクトはオフラインのサービスによってマネタイズを実現する仕組みとなっており、そのマネタイズ過程に収入となった法定通貨をトークンに替えている。
プロジェクトの進行に従い、このプラットフォームは獲得したデータを使用してより正確な医療サービスを展開する。それによってマネタイズの方式は多元化するが、しかしサービスの全ての過程は実際的なオフラインから離れることは出来ない。
全ての運営過程で、トークンはビジネスをサポートするという作用しか持たない。トークン価値は、遺伝学者の考慮する問題ではないということである。
中国国内の医数链プロジェクトも、同様の思考回路を持っている。医数链は、比較的小さな職業病領域から始まり、現在の資源を使用しブロックチェーンプロジェクトを立ち上げた。Xcareもまた、将来的にパブリックチェーンの上に自身のdAPPを展開し、ユーザーへ実際的な医療サービスを提供するとしている。
成功と失敗が半分に分かれる―――ICOプロジェクト
ICOの本来の目的は、予約販売サービスによって行われるマーケット上のクラウドファンディングである。2013年、早期のICO企業が現在の金融領域に現れ、それは爆発的なスピードで仮想通貨マーケットに広がり、投機の波を興した。
しかし、この潮流は、広がるのも早かったが、プロジェクトを消し去るのも早かった。2013~2014年の間、多くのプロジェクトが投機の中で消え、また、直接的な詐欺であると判定された。
Engadgetのデータによると、2017年、902個のクラウドファンディングを行った仮想通貨の内、45.6%は既にプロジェクト失敗となっている。
それでもやはり、我々は、依然生き残っている優良なプロジェクトを見つけることが出来る。
Medicalchainは2月1日にICOを行い、一日も経たずに限度額となる2400万米ドルの調達に成功した。
Medicalchainの目的は、ICOを通して健康サービスを予約販売することにあった。 しかし実際的には多くのICO参加者が投機的な心理によってICOに参加しており、わずかばかりの人々のみが医療サービスを予約購入する結果となった。これは当然、Medicalchainが自身のプロジェクトの目的を達成することには影響しない。彼らのプロジェクトの計画が、投資家を安心させているからだ。
このようなビジネスモデルでは、これらの企業(エコシステムを作る企業を含む)はトークンの作用を非常に重視しており、トークン価格が上がることによる利益の一部を試算している(それを確かに試算する方法など無いにも関わらず)
これは、濡れ手で粟を掴むというようなものではなく、実質的には一つの企業が金融資産(トークン)と経営資産(サービス)を同時に運用しているモデルだとも言える。経営資産を管理し金融資産で利益を得ているのである。しかし、もし”金融資産(トークン)”が占める割合が大きくなれば、当然、リスクも大きくなることは避けられない。
イーサリアムがプラットフォームになるのか
2018年3月、イーサリアムの創始者Vitalik Buterinは、「利用料(賃貸料)について語ることが好きな人はいない。しかし我々は必ずこの先駆けとなる」、と示した。
ボトムレベルのdAPPがますます増えるに従い、イーサリアムの基礎フレームは既に重い負荷を無視できなくなり、ネットワークの処理が追いつかないことも多くなった。この流れは必ずビッグブロック論やdAPPの自然淘汰に繋がるため、改革は一刻の猶予も許さない。
これまでの暗号通貨は、資源に対する価格設定に適した方式を見つけ出せておらず、イーサリアムが利用料(賃貸料)を設定することは、将来、ブロックチェーンがマネタイズを行うための第一歩となる。
それ以外にも、これはブロックチェーンが仮想という世界から抜け出し、現実に向かうキーポイントになるだろう。マネタイズの出来ない技術が、どのようにして投資を引きつけるのだろうか。
テンセントは医療の領域でブロックチェーンを活用する
シェアリングエコノミーの基礎は、リアルタイムで監視された資源と需要を調整し、資源の最大利用を実現することにある。
Airbnbのようなユニコーン企業からすれば、彼らは既に成熟した管理モデルを持っており、安定した資金流入が存在する。彼らがブロックチェーンをテストするのは、ブロックチェーン技術がより透明性ある、高効率で公平なシステムを可能とするからである。
P2P宿泊は現在も伸びており、ゴールドマン・サックスの調査によると、P2P宿泊を使用したことのある多くのユーザーは既存のホテルを好まないと回答している
この種の企業がプライベートチェーンもしくはコンソーシアム型ブロックチェーンの方式でブロックチェーン技術を一般的に採用する場合、彼らはトークンを流通させる必要がないため、ノードも匿名の形式とはしない。彼らが注目しているのは、ブロックチェーン技術そのものなのである。
ブロックチェーン技術を使用することによって、それまでは人によって行われていた政府発行IDの情報管理も、将来的には安全な保存と検証が行われる。ユーザーと民泊オーナーはレビュー機能を完全に信頼することも可能となる。レビューはトレサビリティー可能であり、マイナスレビューを削除したり、ヤラセレビューによるマーケティングを防ぐことが可能となる。
医療領域には、中国インターネットの巨頭が徐々に進出している。4月12日、2018年中国インターネット+デジタル経済シンポジウムが重慶で開かれた。そこでは、テンセントCEOの马化腾がブロックチェーン+医療プロジェクトとして、デジタル処方箋を発表した。
马化腾はこう示している。「テンセントと江西柳州は、Weixinでの診察予約、診療代金支払い等サービステストを基礎として、中国初となる院外処方流転サービスを実現する。院内で処方箋を発行してもらえば、院外で薬を購入したり、薬の配送を手配したり出来る。
院外処方箋は、国家衛生計生委員会及び医院、医薬企業等、多くのノードとなるポイントが存在するため、我々はブロックチェーン技術を使用し、改ざん耐性を持つ処方箋を実現する。また、これは我々が進めてきたブロックチェーンプロジェクトの実際的な応用となる。」
上記のようなAirbnbとテンセントのマネタイズモデルは、多くの変化を生むことはない。それは、これらの企業がブロックチェーン技術を使用する際、コストや効率を考慮し、ブロックチェーン自体から利益を得ようとしないためである。このモデルは、バイドゥ、アリババ、Alphabet等の国内外に存在する大型企業に適している。彼らは、新しく生まれたテクノロジーによって転覆させられたいなどとは考えていないのだ。
ブロックチェーン領域、BATが飲み込むのか、スタートアップにチャンスはあるのか
XCAREの発起人である茅泽民はこういった認識を示している。「医療領域だけではなく、将来では、異なる様々な領域に一つか二つの大きなパブリックチェーンが存在し、それ以外の小さなチェーンは、それら巨大なチェーンに飲み込まれるか、消えることになる。」
これは、既存のビジネスの法則とまったく同じである。混乱は、統一に向かうのだ。
事実、一つの技術が持つ未来の価値は、将来の企業に多くの利益を生む。ブロックチェーン技術そのものはマネタイズの可能性を持つことが難しいが、しかし、もしこの技術が本当にホワイトペーパーに書かれているような方向に発展すれば、それは全ての産業にとって革新となる。
しかし、その前に、投資家は理智を持たなくてはならない。我々はこのように自身へ問いかけても良いはずだ。「なぜブロックチェーン技術に投資するのか、なぜICOに参加するのか。」
テンセントとアリババは既に自身の部署で医療領域でのブロックチェーン技術運用を進めている。表面的には、スタートアップ企業が展開する電子健康記録(EHR:Electronic Health Record)チェーンやDNAチェーン等の意図とは競合していないように見える。しかし、それも全ては時間の問題である。
つまり、最終的にBATがブロックチェーン技術を掌握すれば、トークンシステムを取り除いた上で、スタートアップ企業と衝突し、やはり彼らを取り囲むだろう。医療エコシステムを構築することの見通しを立てることは難しい。しかし、はっきりとしているのは、単純な技術としてのブロックチェーンは、これからも果てしない発展の可能性が残されているということだ。
下記記事を参考に翻訳し加筆修正・編集して作成致しました。
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