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中国工商銀行は貧困家庭を助けるためにブロックチェーン技術を使用した金融サービスを研究している

投稿日:2017年12月3日 更新日:

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中国 AI 人工知能 ブロックチェーン

【要約】
・伝統的なシステムとブロックチェーンを使用したシステムには適材適所がある
・中国の貧困層を救うプログラムにおいて、ブロッチェーンは力を発揮するだろう
・多くの地域に散らばる貧困家庭への決済は、いくつものレベルでの認証を要し、伝統的な方法では限界がある。しかし、ブロックチェーンを使用すれば、それをより早く、確実にすることが出来るのではないか。

デジタルデータにおけるプライバシーとセキュリティは、日に日にその重要性を増している。ブロックチェーン技術が持つトレサビリティ性、改ざん耐性と言った特性は、そういった理由からとても貴重なものである。ブロックチェーン技術の発展は、現在、多くの挑戦を伴うチャンスを目の前にしているが、特に重要となるのは、ブロックチェーン技術を実際的にどのようなシーンで運用していくのかだろう。先日執り行われたマイクロソフトアクセレーター・ブロックチェーン討論会において、中国工商銀行本部プロダクト・イノベーション所所長の钱大智は、工商銀行が現在、貧困家庭を救うための金融サービスにブロックチェーン技術を応用できないか研究していると語った。この記事ではその内容を要点を絞りご紹介したい。

 

中国政府の貧困解決プログラム

伝統的な技術とブロックチェーン技術の違いを、まず、理解しなくてはいけないだろう。ブロックチェーン技術は、簡単に言えば帳簿をシェアし分散させることによって、それを記録する。しかし、それはただの分散式保存方法なのだろうか?今までの伝統的な技術も、データを一箇所に集中させる保存方法に加え、分散式保存方法を採用することは可能だった。しかし、それは非中央集権型と呼べるのだろうか?実際には、それらの問いは間違っている。例えば、我々が銀行で貯金をしたとき、もし銀行が伝統的なデータベースを採用していたとすれば、顧客は銀行を信用し利用しなければならない、銀行は突然に潰れたりはしないと。また銀行は必ず正確な出入金等の記録を残していなければならない。銀行はそのとき、使用者の権利を行使することが可能だ。しかし、ブロックチェーンは違う。例えば、それは銀行を金庫のようなものに置き換える。我々はお金を金庫に入れる。金庫の鍵は我々、顧客本人にしか渡されない。他の人間には、その権利を行使することができない。顧客は、一種の信任関係を金庫と結ぶことになる。

別の問題もある。伝統的な技術のフレームワークを使用しているかぎり、例えば中国国内にある各国の大使館に対してビザの申請をしたい場合、多くの中国人は資産証明書を求められることになる。それは必ず銀行からの具体的な資産証明でなくてはならず、いわば銀行がその人物の資産を証明している形となる。しかし、ブロックチェーン技術でこのフレームワークを解決するのであれば、その人物は自分自身でそれを証明することが可能となる。その人物自身が、金庫の鍵を保有しているかぎり、資産はすべてその人物に帰属する。彼は自分で資産を証明することになるのだ。

例えば、中国国内での貧困家庭を助けるプログラムのうち、その監督は中国政府が実際的に行っている。どの国でもそうだが、政府というのはそれ自体がとても高い公信力を有している。しかし、我々はどのようにしてその政府を監督すればいいのだろうか?伝統的なデータベースを使用しているかぎり、政府は、その政府自ら自分自身を監督し、身の潔白を証明しなければならない。しかし、その貧困家庭を助けるプログラムがブロックチェーン技術によって運用されたのであれば、政府は、そのような煩わしい証明を行う必要はなくなる。それは、政府の行政審査の過程すべてをブロックチェーンに記録し、誰が提唱したのか、誰が審査したのか、誰が支払いをしたのか、すべてをクリアにすることが可能となる。

銀行資金の支払い情報までをもブロックチェーン上に記録することは、行政審査だけでは、本当に貧困家庭までそのお金が届いているのか不明瞭だからである。ブロックチェーン技術を使用した金融サービスは、すべてのチェーンを途切れることなくつなぎ、完全な管理を可能とする。貧困家庭が給付条件を満たしさえすれば、政府の審査委員会から委託を受けたブロックチェーン技術を使用したシステムは、直接銀行の中央システムに命令を出し、そして、次の瞬間には貧困家庭の口座へと給付金が振り込まれることになる。それらのデータは全てブロックチェーン上に記録され、最終的にクローズドループとなる過程が完了する。

審査、監督の過程を記録するというのは、伝統的な手法では比較的に困難な行為と言えるだろう。その多くが、紙を使用した書類で行われるため、全てを捲り中身の文章を読むだけで一苦労だ。そしてまた、紙に書かれたそれらの情報は、容易く改ざんが可能である。しかし、これらの情報をブロックチェーンに書き込むだけで、審査にかかる時間は圧倒的に縮小され、情報の改ざんは不可能となり、また、その情報に付随する更に多くの工程や、写真等のメディアを記録することができるようになる。

 

境界線を超えて協力を促す接着剤となる

伝統的な仕事では、一つの大きな信用力を持つ企業がシステムを開発し、それを中心として、例えば株式の登記や、証券の登記が行われてきた。しかし、ブロックチェーンはそれ自体が帳簿となることが可能であり、情報のシェア、情報を発信する、それらの行為を中央システムを必要とせずに行うことが可能となる。現在、我々は非常に多くのシステムを運用している。その運用効率は高く、人々はそのシステムを信用している。これらのシステムは、ブロックチェーン技術を使用した新しいシステムに置き換えられるべきだろうか?钱大智は、その必要はないだろうと語る。ブロックチェーンは、信用主体と交わることのできないもの、今までの伝統的なシステムでは難しかったものに対して、よりその力を発揮し、非常に大きな発展の潜在力を秘めているのだと、彼は言う。

例えば、貧困を救う資金管理センターは、その資金を様々なプロジェクトに割り当てる仕事を担っている。伝統的なシステムでは、資金は、非常に多くの地方自治体(1800あまり)に跨り、町村や県の何層にもなる地方政府の階層において、複雑な審査、監督を経なければならない。しかし、例えば、ある農村でその資金が必要な場合、ブロックチェーン技術をつかえば、その要請は、ブロックチェーン上での審査を受けるだけで、給付金が支給されるようになる。プロジェクトの条件にさえあっていれば、審査が終わり次第スマートコントラクトを通して、その間に人や物の干渉を省き、瞬間的な速さで、そして大幅な低コストで、それを実行することが可能となる。

もし2つのブロックチェーンを開発すれば、その機能システムは更なる可能性を発揮するだろう。その形態は比較的簡単に理解できる。たとえば、まず、一つのブロッチェーンを工商銀行に置き、将来的にその他の銀行や金融機関にも、それをシェアできるブロッチェーンを置く。それには多くの金融機関の支持が必要不可欠であるが、それを実行できれば、直接融資から、ブロックチェーンによる融資まで、様々な境界線を越えた協力が可能になる。当然、それらのブロックチェーンには金融レベルでの安全性が求められるたろう。しかし、それはまた、その他のフィンテックへの応用も可能とする。

将来、産業ファンドなどが新しい金融プログラムに対する支持を表明しても、ブロックチェーン技術を使用したシステムであれば、容易に参与することが可能となる。政府の評価を経て、協力体制は全ての銀行に広がることも可能だろう。ブロックチェーンはプロジェクトにおいて、政府が資金を管理監督することモ手助けできる。業界の垣根を超えて、データを融合させるのだ。

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